介護離職を防ぎたい 企業に対応策を模索する動き…休むと「同僚に迷惑」「昇進に響く?」
離職者 年10万人
介護をしながら働く人は増えている。総務省の5年ごとの調査では、22年10月時点で364万6000人と、前回より18万3000人増えた。同年9月末までの1年間の介護離職者も10万6000人と、前回調査より7000人増加した。 危機感を持つ企業は多いが、具体的な支援策を打ち出せていないのが現状だ。 東京商工リサーチが昨年10月、インターネットで全国の企業に調査したところ、回答した5125社のうち、64%が「介護離職者は将来的に増える」と答えた。一方、自社の離職防止対策については、38%が「不十分だ」と回答した。 介護離職は、収入が途絶えるといった個人的な問題にとどまらない。経済産業省は、主に正社員の離職に伴う人手不足や、心身の疲労による業務効率の低下で生じる経済的な損失を試算。30年時点で年9兆1792億円に上るとした。例えば、製造業で社員3000人の大企業の場合、1社あたり年6億2400万円、中小企業(社員100人)は同770万円になるという。
より深刻な中小企業
中小企業にとって、人材流出の影響はより深刻だ。 「社員が1人欠けると、代わりは簡単に見つからない。私がハンドルを握ることもある」。埼玉県川口市の運送業「新郷運輸」の赤城義隆社長(52)は語る。 社員はドライバーを中心に約30人。平均年齢は50歳で、高齢の親を持つ世代が中核を担う。赤城社長は3年前、母親(76)が脳梗塞(こうそく)で介護が必要になり、「心配事を抱えていては仕事にならない」と痛感したという。 社員全員から、定期的に家庭の事情を聞くことができるよう、年2回の健康診断に合わせた個別面談を始めた。福利厚生で、民間医療保険の個別相談サービスが使えると社員に周知。社員の介護についてケアマネジャーに助言を求められるように協力を取り付けた。 赤城社長は「社員一人ひとりのマンパワーが、中小企業の宝だ。思いつくところから、支援態勢を整えたい」と話している。