100年の甲子園で堂々と主役級の存在感!改めて「大社旋風」を振り返る
100年を迎えた甲子園で、また新たな「旋風」が生まれた。その発信源は大社(たいしゃ)高校。出雲大社で有名な島根県出雲市の公立高校である。 今夏32年ぶりに聖地に戻ると、93年ぶりのベスト8に加え、107年前の夏を超える3勝をマーク。実に記録的な大会を過ごした。 本稿では改めて「大社旋風」を振り返ってみたい。 「神々の国からやって来た少年たちの快進撃は……100年の甲子園でまだ続きます!」 3回戦の早稲田実戦で勝利した直後、こんな名実況が生まれた。初戦から報徳学園、創成館と実力校を相手に連破。続く古豪対決も制し、大会の主役であることを印象付けた。 この早稲田実戦は、終盤から目まぐるしい攻防が繰り広げられた。 1点を追う9回裏、大社はスクイズで追いつき、なおも1死二、三塁と絶好のサヨナラ機をつくる。ただ、ここは早稲田実が高校野球では類を見ない「内野5人シフト」を敷き、「7-2-3」の変則ゲッツーを完成。試合は延長タイブレークへ突入する。 10回は互いにバント失敗が絡み無得点。11回表も早稲田実が得点を挙げられず、11回裏についに決着の時を迎える。 タイブレークは無死一、二塁でスタート。代打に入ったのは背番号12・安松大希だった。安松は地方大会を含めて今夏初出場で、志願しての打席。見事に三塁線へ完璧なセーフティバントを成功させた。最後は満塁からエース・馬庭優太がセンター前へサヨナラ打。熱戦に終止符をうった。 準々決勝の神村学園戦では2-8と完敗を喫したものの、中盤までは互角の勝負を展開。終了後は甲子園のスタンド全体から温かい拍手が降り注がれた。 大会を通して、馬庭の投打にわたる活躍は観る者の心を打ち、1番打者・藤原佑の韋駄天ぶりは敗れた神村学園戦でも際立っていた。まだまだ見ていたいと思わせるチームであった。 そう思わせたのはスタンドの応援も同じ。チャンステーマの『サウスポー』が流れると、スクールカラーである紫のメガホンが鮮やかに揺れ、常に場内を呑み込んでいた。ある種の「魔曲」と化していた。 鮮やかな記憶を残し、「旋風」は神々の国へ舞い戻る。またいつの日かお目にかかりたい。 [文:尾張はじめ]