痛みの少ない、数秒でできる指先からの微量採血、一部で導入始まった、自宅でできる超カンタン方式
血液が大量に捨てられている現実
有岡氏は、これまでの方法での検査の現場を長年にわたり実際に見てきた。それによると、実は検査内容によっては、採血管2本で7㍉㍑採取された血液で使われるのはほんの微量(数滴)で、残りは廃棄されている。処分される血液の割合は9割のものもあるそうで、毎日多くの国民が採血していることを考えると、膨大な量の血液が無駄に医療廃棄物として捨てられていることになる。 「これだけの大量の血液の廃棄されている実態は、担当医師、採血している看護師なども含めてほとんど知られていません。採血されてきた国民には知る権利があります。われわれの手法では、それほどの血液は検査には全く必要なく、指先からの血液数滴で十分同じ精度の検査できる」と訴える。 つまり検査に必要な最低量だけを採血すればよいわけで、この指頭からの採血方法がすべてにおいて効率的だと言える。
静脈採血と同様の検査データ
この手法を導入するに当たっては、注射針を使った静脈からの採血と、指先からの「キャピラリーカップ」を使ったのとで、同じような検査結果が得られるのかがポイントとなる。自治医科大学附属さいたま医療センターが検査ボランンティア38例による指頭採血と静脈採血のデータを、14の検査項目で比較したところ、両方の相関関係は相関指数が0.88~0.99となるなど、非常に高い結果が得られ、「静脈採血による検査とほぼ同等の結果が得られた」と報告されている。
普及への期待感
この方法を導入しているいる葭山(よしやま)クリニック(兵庫県西宮市)の葭山稔院長は「現在、ほかの会社が行ってきている微量採血の手法が『痛い』という、良くない評判があるが、有岡氏の微量採血はこれとはまったく異なる。この方法は(1)自分で検査ができる(2)従来手法と比べて安全性が高い(3)医師や看護師の負担が少ない(4)痛みが軽いーなど良い点が多いので、普及していくことを期待しています。しかし、現在の静脈採血のやり方に慣れている人も多いので、方法を変えるには、不慣れなために反対する医療従事者を少なくして、少しずつ着実に行う必要があります」とコメントしている。 実際には病院など大きな組織に導入するとなると、従来の採血方法から一挙に変えるのではなく、徐々に、場合によっては共存しながら変えていく必要があるかもしれない。医療の現場は既得権益が多くあるだけに、長年行ってきた採血システムの変更を行うには時間がかかりそうだ。