痛みの少ない、数秒でできる指先からの微量採血、一部で導入始まった、自宅でできる超カンタン方式
痛い、ちょっとしたミスで採血部分が腫れあがるなどトラブルが多い腕からの静脈採血検査。これを、簡単な器具を使うことにより、指頭と呼ばれる指先から、これまでの数十分の1に相当するわずか0.2㍉㍑の血液を数秒で採取ができる超カンタンな多機能微量採血管「キャピラリーカップ」が開発され、一部で導入が始まっている。これを考案、開発したのは東京・板橋区に本社のある医療機器販売会社のジャパン・メディカル・リーフの有岡和彦社長で、本社で実際にこの微量採血のやり方を見せてもらいながら、導入に向けての意気込みを聞いた。 【画像】痛みの少ない、数秒でできる指先からの微量採血、一部で導入始まった、自宅でできる超カンタン方式
わずか数滴の血液
腕の静脈から採血する方法は当たり前のように過去数十年にわたり病院などの医療機関で実施されてきた。あまり知られていないが、医療機関での採血時の針刺し事故、トラブルは意外と多いのが実態で、気分が悪くなり気を失うケースもある。こうした実態を長年見てきた有岡社長は、何とか簡便で痛みの少ない安全で効率的な方法はないかと、日赤医療センターの臨床検査部に勤務していた現取締役の喜島康雄氏(臨床検査技師)と一緒に研究を重ねて開発に成功したのが、3㌢㍍ほどの「キャピラリーカップ」を使った指先からの採血手法だ。 採血管の中に入っている独自開発した分離フロートにより、遠心分離後に上部の血漿層から肝機能や脂質など生化学検査ができ、下層部分の血球層からは糖尿病の検査には欠かせないヘモグロビンと糖との結合割合を示すHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)など従来法の静脈血とほぼ変わらない数十項目を調べられるという。
採血困難者に朗報
現在、乳幼児や高齢者の場合、注射器の針を刺す静脈が見つけられず採血困難で検査ができないケースもあり、その数は数百万人ともいわれている。このため、微量採血に変更すると、現場の負担も大幅に軽減され、有岡氏によると、自宅で自分で採血ができれば採血困難者の数を大幅に減らして、生活習慣病などの疾患をいち早く見つけ出すことが可能になるという。 この方法では、採血した検体を郵送により検査することができることから、外出が困難な離島に住んでいる住民や高齢者に採血の機会を提供できる。これにより、これまで見過ごされてきた隠れた病気の発見に役立ちそうだ。 現に2021年には延岡市が、生活習慣病重症化予防事業の一環としてキャピラリーカップによる採血を数千人対象に行った。その結果、採血をしてなかったため見つけられなかった重症患者を発見することができたという。こうしたことを積み重ねていけば、高齢や採血を嫌がって受診していなかった隠れ病患者に対しては、有効な検査手法になる可能性がある。