黒田総裁は何を指示したのか “意味深な一文“から日銀の思惑を読み解く
「2%の『物価安定の目標』をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、『量的・質的金融緩和』・『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』のもとでの経済・物価動向や政策効 果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した」 ---------- 金融市場の話題は日銀が7月29日の声明文に記載した上記一文の解釈に集中しています。これが何を意味しているのか、市場関係者の間では三者三様の見方が示されており、予想が割れています。7月29日の総裁会見では、この一文について記者からの質問が集中しましたが、総裁はほとんどヒントを与えませんでした。そこで本稿では、議長(総裁)が執行部(いわゆる事務方)に何を指示したのかを予想するとともに、現在、市場で示されているいくつかの見方を整理し、その妥当性を第一生命経済研究所の主任エコノミスト・藤代宏一さんが検証していきます。
<参考>総裁の回答で主要な部分(抜粋)
海外経済・国際金融市場 を巡る不透明感などを背景に、特に物価見通しに関する不確実性が高まっている状況を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、この 3 年強の間の色々な金融緩和の下での経済・物価の動向、あるいは政策効果について、総括的な検証を行うことにしました。もちろん、スタッフは常に分析をしているわけですが、「量的・質的金融緩和」を導入して 3 年強、そして「マイナス金利」を導入して半年――1 月に決定して実際に適用されたのは 2 月からですから半年位―― というところで、「総括的な検証」を政策委員会において行うということです。 政策委員会の全てのメンバーがこうしたことが望ましいと言われまして、この公表文に示したということです。具体的に、「総括的な検証」を行った後の金融政策については、「総括的な検証」を行ったうえでのことですが、明確なのは、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要かという観点から、「総括的な検証」を行うということです。 ---------- 「量的・質的金融緩和」の導入にあたっては、「できるだけ早期に」という際に念頭に置いている期間として、2 年程度という期間を示しました。「量的・質的金融緩和」の導入後、すでに 3 年以上経過しているのは事実ですが、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという方針に変化はありませんし、今後もそれを変更する考えはありません。 以上は「総裁会見の抜粋」です。