黒田総裁は何を指示したのか “意味深な一文“から日銀の思惑を読み解く
「サプライズ型」から「予告型」で、より大胆な緩和策を導入するという見方も
一方、この記事の冒頭で提示した一文を「追加緩和への布石」と捉える向きは多いです。日銀が追加緩和をほのめかすような一文を挿入したのは今年1月29日のマイナス金利導入があまりにも唐突で、そのサプライズ感が金融政策の不透明感を通じて投資家マインドに悪影響を与えたとの反省から「サプライズ型」のコミュニケーションに区切りをつけ、「予告型」に変更したとの見方です。 今回、採用が見送られた「マイナス金利深掘り」、「長期国債の買い入れペース増額」は、その突発的な発表が債券市場のボラティリティ(変動率)上昇や銀行株の急落といったネガティブな事象に直結する可能性があります。それに配慮してECB型の予告をしておけば事前の織り込みが進むため、大胆な緩和策が導入できるというわけです。 来月9月会合でマイナス金利深堀り(▲0.1%→▲0.3%)、長期国債の買い入れ増額(80兆円→100兆)が加わり、2会合越しでフルパッケージの追加緩和が完成するとの予想もあります。
7月のETFのみの追加緩和は、日銀の自信か?
ただし筆者は今回日銀がETF単独の追加緩和を採用した理由を、日銀が名目金利の低下に満足したことにあるとみています。その見方が正しければマイナス金利深堀り、長期国債の買い入れペース増額のような金利に影響を与えるオプションが9月会合で採用される可能性は低いとの結論にたどりつきます。そのほかでは、(1)量・質・金利という現在の枠組みを抜本的に見直す、(2)マイナス金利撤回、(3)テーパリング(≒量的緩和縮小)を示唆、など多くの憶測が飛び交っています。 まず(1)については、金利の操作目標を翌日物金利から5年・10年といった長期ゾーンに時間軸を伸ばすといった枠組み変更が選択肢として考えられますが、すでに超長期ゾーンまで日銀のコントロール下にある現状を踏まえると、それをすることによって得られるメリットがあるのか疑問です。(2)ついては「マイナス金利は副作用が大きい」との結論が示されることを意味するため考えにくく、(3)については、「金融政策に限界は感じていない」との黒田総裁の発言に完全に逆行するため、その可能性は極めて低いでしょう。