柴咲コウに聞く「怒り」との向き合い方。「人が一線を越える、超えないは、本当に紙一重」
人生のどこかで一度、絶望していないとできない生き方
喪失の怒りと悲しみを静謐なタッチで描き、観る者に「復讐とは何か」を考えさせる映画『蛇の道』。怒りや悲しみは、誰もが無縁ではいられない感情だが、柴咲さん自身は日頃これらの感情とどのように向き合っているのだろう? 「小夜子はそうしたら疲れることを承知の上で復讐の道を選び、怒りや悲しみといった感情をエネルギーに変えて生きています。『必ず達成するんだ』という強い意志のもとに、淡々と。それって人生のどこかで一度、絶望していないとできない生き方だと思うんですね。相当な何かがないと、それを原動力にはできない。 私自身は蛇とは真逆の鳥なので、何かで怒りを感じてもすぐに忘れてしまいます。干支も酉年ですし(笑)。『まあいいや、寝よ! 』とさっさと寝て、解消する。だって執着ってすごく疲れるじゃないですか。 でも小夜子はそうじゃない。だからこそ蛇の道なんでしょうね」
たくさん考えて、たくさん寝て、浄化する
SNS全盛の今、怒りの応酬からなる炎上はもはや日常茶飯事だ。著名人のちょっとした発言が攻撃されることも珍しくない。 「自分の考えと違うというだけで怒りを感じて、突発的に強い言葉を投げ返す。SNSの難しいところだと思うのですが、簡単なのでついピンポンしたくなっちゃうのでしょう。で、言われた側も『お言葉ですけど! 』って簡単に返してしまう。 でも、それでは何も解決しないんですよね。それぞれが『自分こそが正義だ』と思っている、正義と正義のぶつかり合いだから。しかもSNSは文字だけなので、ニュアンスの違いで受け取り方や伝わり方が大きく変わります。対面での会話でも誤解が生まれることがあるのに、文字だけなのですから余計難しいと思います。 最近のメール論争や、チャット形式の会話でのルール的なものもそうですよね。最後に『。』を付ける付けないに始まり、『~』でやわらかい雰囲気を出すとか、『! 』を付けるとか。 そんなことで受け取り手が気持ち良くなるならやりますけど、そこに依存しちゃっていいのかな? とも思います。特に私は考えすぎるタイプなので、余計に。で、その解消法が寝ることなんです。たくさん考えて、たくさん寝て、浄化する。日々そういう感じで、なんとかやっています」