新しい建築の理念を現実に 未来都市の実験場となった万博 「生命」とのつながり示す 万博未来考 第4部(2)
来年4月に開幕する2025年大阪・関西万博もまた、建築を通じて新しい未来都市を提示できるかが問われる。
万博のシンボルで、約2万7千立方メートルもの木材を使用し、世界最大級の木造建築物とされる大屋根(リング)。万博会場全体のデザインプロデューサーで、リングを設計した建築家の藤本壮介さんは「現在は自然との共生が重要なテーマ。持続可能な社会を作るうえで木造が注目されている」と話す。
「日本が万博を通じ、1千年以上の木造建築の伝統と豊かな森林資源、さらに最先端のテクノロジーを提案できることは大きな意義がある」
海外パビリオンでも、中世の「理想都市」を具現化するというイタリア館の最大の特徴の一つは、柱など主要部材のほとんどに木材を利用した設計だ。閉幕後は部材の多くがリサイクルされる計画という。
イタリア政府担当者は「パビリオンの建設を通じて、環境への配慮の重要性を表現しようとしている。建物の美しさだけでなく、取り組みの意義を来場者に感じ取ってもらえれば」と語る。
木のぬくもりに触れることは、生命に触れることでもある。メタボリズム運動が追求した「生命」と「建築」のつながりが、別の形で新しく生まれようとしている。