「結婚はまぶしくて手が届かないもの」 法律上は〝他人のまま〟の同性カップル、希望のためにたたかう
周囲の応援あっても「他人のまま」 の現実に失望
ゆうたさんの母は、5年前に60代後半で亡くなった。ゆうたさんの母と2人は20年ほど前に一緒に熊本市動植物園を訪れていた。「お母さんは、このゾウが好きだったね」と母との思い出の場所で2人が取り出したのは、当時、母がインスタントカメラで撮影した写真。そこには、2人の仲睦まじい姿がおさめられた。 こうぞうさん 「当時は、応援してくれる声や味方でいてくれる声がなかったりする中で、僕らの存在をそれだけ受け入れてくれていたんだなと、こういう写真を通じて思うと、とてもありがたいしうれしい」 80代のこうぞうさんの母も、2人のことを応援している。こうぞうさんは、20代に入ることまで母に本当の気持ちを伝えられずにいたが、カミングアウトのきっかけもゆうたさんと付き合うようになったからだという。母は、その時のことを「覚えてないけど…」とつぶやくが、拍子抜けしてしまうほどに話をすんなりと受け入れたと2人は振り返る。 こうぞうさんの母 「初めて会ったときにゆうたくんは、かわいいなと思いました。いまも、大好きです。2人が幸せなら同性でも結婚に何も問題はないと思うんです。国さえ認めてくれれば。そしたら幸せになる人がもっとたくさん声を上げて出て来られると思うんですよね。だから家族の人も、そういう子どもさんを持っても何も恥ずかしがることも卑下することもないから、もっと表に出て応援をしてもいいと思うんです」
お互いの家族も受け入れて、応援してくれている。あたたかな人たちに囲まれているからこそ、それでも超えられない隔たりがあることに落胆してしまうのだ。いつも和やかな印象の2人だが、記者の「2人にとって結婚とはどんなものか」という問いかけに、真剣な表情で頭を悩ませていた。「異性愛者だったら当たり前の権利なはずだよね…」と言葉を選びながら、悩みぬいた最後に、こうぞうさんは、このようにつぶやいた。「僕らはどれだけ大切に思っても、一生この人と添い遂げようと思っても家族になるという選択肢がない。“僕らは家族なんです”と言えるのはとてもまぶしくて、手が届かないものだと考えています」。