水俣病支援に”新世代”の光 旗に「怨」の文字掲げデモした時代から変わる支援のあり方、若者が共感抱くきっかけに
取材・撮影:KKT熊本県民テレビ
水俣病は、最初の患者が公式に確認されてから70年の節目を2026年に迎える。しかし政府は被害の範囲を把握しようともせず、患者たちは「自分たちが全員死んで水俣病が消滅するのを待っているのか」と憤りを露わにする。 そんな患者のそばにはいつの時代も支援者がいた。かつて「支援」と言えば、デモや座り込みなど原因企業チッソや行政と激しく衝突するイメージだった。しかし今、その支援者たちの子として生まれ、時に「第2世代」と呼ばれる人たちは新しい視点で水俣病に向き合おうとしている。その視点は、教科書でしか水俣病を知らない若者が共感を抱くきっかけにもなっているようだ。(熊本県民テレビ記者 東島大)
水俣病学ぶ生徒 熱視線の先に患者と支援者
この夏、筑波大学付属駒場高校の生徒たちが熊本県水俣市を訪れた。生徒みずから質問事項を事前にまとめ水俣病問題を学ぶ旅だ。母親の胎内で水俣病になり、水俣病の公式確認と同じ年に生まれた坂本しのぶさん(68)との交流はそのハイライトでもある。しのぶさんに限らず、胎児性患者の多くは発語に障害があって聞き取りづらい。そうした時にわかりやすく話を「通訳」するのが谷由布さん(43)だ。 生徒たちからは由布さんにも「支援団体はどのような活動をしているんですか」という質問が寄せられた。患者の日常生活の介助が多くを占めることなどを説明したあと、由布さんは言った。 「被害者が訴えないと必要なものが受け取れないという実情が今もあります。患者さんは自分の水俣病と向き合わざるを得ないけれども、行政は見なければ見ない、つきあわなければつきあわないですんでしまいます」 水俣病になっても自分から「認定して下さい」「医療費を補助して下さい」と手を挙げて膨大な手続きをしない限り一切救いの手は差し伸べられない。これを「本人申請主義」といい、支援者が身近にいなければ何も出来ないと批判されている。 筑波大学付属駒場高校からは例年4割以上の生徒が東京大学に進学する。それを踏まえた上で由布さんはこう続けた。 「皆さんはもしかしたら将来その行政の一部にいるかもしれないから、その時には『めんどくさい』とか思わずにいろんなことに頑張って取り組んで下さいね」