「台風」特別警報の見直しへ 「気象現象」から「災害被害」の予報にかじを切る気象庁
発表基準の見直しが意味するもの
こうした特別警報や記録的短時間大雨情報の発表基準の見直し、また過去事例引用時の発表方法の改善は、気象庁が「気象現象」の予報から「災害被害」の予報へとかじを切り始めたことを意味する。 気象庁は長年、雨や風といった気象現象について観測し続け、その程度によって警戒を呼びかけてきた。 しかし、2017年に警報発表の仕組みを、雨量そのもので判断するやり方から、災害危険度の高まりをあらわす指数(土壌雨量指数、表面雨量指数、流域雨量指数)で判断するやり方に改善。これにより、実際の災害発生との結びつきが強まった。 そして、今回明らかになった、これから進めようとしているさまざまな見直しや改善の方向性も同じで、災害発生との結びつきを強化し、人々の避難行動へつなげていくのが目的であるといえるだろう。 それではなぜ、気象庁はこのような方向にかじを切り始めたのか。その背景には、国全体として、過去の災害被害とその時の気象状況に関する詳細なデータなどの蓄積が進み、「これまで関連が分からなかったことが、分かるようになってきた」ことがある。 気象庁は長年にわたって、気象に関するさまざまな現象を観測し、その記録を残し続けてきた。詳細な災害被害については、気象庁が自ら調べることはできないが、災害に見舞われた都道府県や市町村など地方自治体が、被災後の苦しい状況下にありながら被害の詳細な状況を調査し、記録に残してきた。 このように各機関によってコツコツと蓄えられてきた膨大なデータが、「災害被害」の予報へと舵を切ることができる礎となっている。 「先人たちの地道な積み重ねが、災害から命を守った」――。そう言えるような基準の見直しになることを望みたい。 飯田和樹・ライター/ジャーナリスト(自然災害・防災)