「台風」特別警報の見直しへ 「気象現象」から「災害被害」の予報にかじを切る気象庁
暴風特別警報も市町村ごとの基準に…
残る暴風、高潮、波浪などの特別警報はどうなるのか。 これらの特別警報は、これまで「伊勢湾台風」級の台風や同程度の温帯低気圧が来襲する場合にしか発表されなかった。 しかし例えば、このうちの「暴風」について考えてみると、昨年9月に千葉県を中心に大停電を引き起こした「令和元年房総半島台風(台風15号)」のように、規模が「伊勢湾台風」級ではなく、暴風域が非常に狭い台風だとしても、最大風速が大きく、社会に大きな影響を引き起こすケースがあることが明らかになった。 このため気象庁は、暴風に関する特別警報についても、市町村ごとに発表基準を設ける方向で検討をすすめる方針だ。現在は、台風の中心気圧以外に最大風速50メートル毎秒以上という基準があるが、これよりも風速が弱くても、住宅倒壊や大停電が予測される風速の場合には、暴風特別警報が発表されるようになる見込みだ。 そして「高潮」、「波浪」などについても、同様に地域ごとの発表基準を設けていく方針で、すべての基準設定が完了すれば、「台風要因」特別警報は結果的に役割を終えることになる。 つまり大雨、暴風、高潮、波浪などが、台風の中心気圧や強さに関係なく、それぞれ独立した基準をもって発表されるようになる。
記録的短時間大雨情報、過去事例引用の改善にも着手
ほかにも、気象庁は記録的短時間大雨情報についても、来年度中により避難につながる運用に改善する方針。記録的短時間大雨情報は、数年に一度程度しか発生しない短時間の大雨を観測した時に発表されるが、発表の条件に危険度分布で「まもなく災害が発生する可能性が高い」ことをあらわす「非常に危険」(警戒レベル4相当)以上であることを付け加える。 これまで記録的短時間大雨情報の役割は、災害発生につながりうる雨量を観測した事実を伝えるものであったが、改善後は避難の必要性を伝える役割も加わることになる。 また、昨年10月の「令和元年東日本台風(台風19号)」襲来時、気象庁は過去事例である「狩野川台風(昭和33年台風22号)に匹敵する記録的大雨」というフレーズで警戒を呼びかけたが、これが特定の地域のみで災害が起こるかのような印象を与えた、という批判的な指摘があった。 このような指摘を踏まえ、過去の事例を引用する時には、単に雨量のみを引用したりせず、どこで災害危険度が高まるかという見通しについても併せて発表するように、呼びかけ方を改善するという。これには、現在開発を進めている「1日先の危険度分布」の技術などを先行的に活用する。