人類によって生み出された「人工元素」は何種類あるか…「驚きの生成方法」と「意外な目的」
人工元素はどうやって作られるか
原子核を高速で他の原子核にぶつければ、原子核反応を起こせることがわかりました。そこで効率的に反応を起こして原子核を研究するために、原子核を高速に加速する加速器の開発が始まりました。 イタリア出身のアメリカで活躍したエミリオ・セグレ博士は1936年、アメリカのアーネスト・ローレンス博士によって発明されたばかりのサイクロトロンという加速器を使って重水素(²H)を加速し、原子番号42のモリブデン(Mo)に照射するという実験を行いました。その結果、地上では当時見つけられなかった43番元素のテクネチウム(Tc)を発見しました。この元素名の由来となったテクネトスは、ギリシャ語で「人工の」という意味があります。人工的に生成された元素にふさわしい名前ですね。 テクネチウムに加えてこれまでに、61番元素のプロメチウム(Pm)と85番元素のアスタチン(At)、および93番元素のネプツニウム(Np)から118番元素のオガネソン(Og)までの29種類の元素が、人類によって生み出されました。ただし、テクネチウム、プロメチウム、アスタチン、ネプツニウム、94番元素のプルトニウム(Pu)は、後の研究で微量ながらも地上に存在していることが明らかになりました。 地上にはない原子番号の大きな元素はどこまで存在するのか、その原子核はどのような構造なのか。その謎を解明するために人類が生み出した元素は、現時点で95番のアメリシウム(Am)から118番元素のオガネソンまでの24種類です。その中の1つ、理化学研究所の森田浩介博士を中心とする研究グループが生み出した113番元素は、2016年にニホニウム(Nh)と名付けられました。 * * * さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする。
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所