人類によって生み出された「人工元素」は何種類あるか…「驚きの生成方法」と「意外な目的」
138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 【写真】いったい、どのようにこの世界はできたのか…「宇宙の起源」に迫る 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
元素は118種類ある
前の記事で、宇宙のすべてのものが素粒子でできていることを紹介しました。一方で、私たちになじみのある性質が現れるのは、原子という単位からであることにも触れました。原子は、現在までに118種類が知られており、そのうち天然に存在するのは94種類です。 本記事では、さまざまな性質をもった原子(元素)が、宇宙の歴史の中でどのように生まれたのか、を考えます。 あらゆる物質は、原子でできています。その原子は、陽子や中性子でつくられた原子核と、周囲を取り巻く電子から成り立っています。陽子と中性子は、原子核をつくる粒子なので「核子」と呼ばれます。陽子の電荷はプラス1なので、電荷がマイナス1である電子の数は、足し合わせた電荷がゼロとなるように決まります。すなわち「陽子の数=取り巻く電子の数」です。 この原子のもつ陽子の総数、陽子数のことを「原子番号」とも呼びます。原子番号が変われば束縛される電子数も変わるので、それに応じて原子同士のつながり方が変わり、さまざまな分子が形成されます。このような原子の化学的性質を表すために、異なる原子番号ごとに「元素」という言葉が当てはめられました。ちなみに原子核に含まれる中性子は、元素の化学的性質には関わりがありません。