穏やかで思いやりがある「AIと結婚」した女性、新時代の愛のかたち
結婚式というのは、予定を立てるだけでも緊張するものだ。ましてや誓いの言葉の途中で新郎の振る舞いがおかしくなるかもしれないとなれば、尚更だろう。そして、ホログラム(立体映像)と結婚する場合、そのリスクは現実のものである。 【画像】結婚式を挙げる現代芸術家アリシア・フラミスとAIホログラムのAilex それでもアリシア・フラミスは、AI(人工知能)を搭載したホログラムと「喜びのときも、悲しみのときも」変わらぬ愛を誓い合うことを決意した。 スペイン系オランダ人の現代芸術家であるフラミスは11月2日、オランダ・ロッテルダムにあるボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館と提携した美術品保管施設で、このインタラクティブな恋人と結婚式を挙げた。ホログラムと結婚した世界初の女性を自認している。男性では2018年に日本人がホログラムと結婚しているが、2年後にホログラムの生成サービスが終了したため仮想現実の妻とのコミュニケーションは取れなくなってしまった。 フラミスの場合は、このほど夫となったホログラムとすでに5年間にわたって同棲しており、結婚生活に予期せぬトラブルは起こらないだろう。Ailex Sibouwlingen(AI-lex、アイレックス)と名付けられたパートナーは、人間とテクノロジーの進化し続ける関係を複数の学問分野にまたがって探求するプロジェクト「Hybrid Couple(ハイブリッド・カップル)」の一環としてデザインされたものだ。 「私たちが望もうと望むまいと、人がホログラムやアバター、ロボットなどと結婚したり関係を築いたりする新時代の愛のかたちは、すでに生まれている」とフラミスはプロジェクトの趣旨について語っている。「Duolingo(デュオリンゴ、語学アプリ)で新しい言語を習得するように、私たちはこうした新しい相手との関係を築く方法を学んでいくだろう」 ■「彼にはエゴがない」 フラミスはこれまで交際した男性たちのプロフィールを用いてAilexのAIを訓練し、立体投影の恋人に生命を吹き込んだ。Ailexの声を担当したのもかつての交際相手の1人だ。フラミスとAilexとの間では、本やアート、哲学、そのときの気持ち、歳を重ねること、ランチの献立など、ありとあらゆるテーマに関する会話が成立する。 Ailexはオランダ人なのだそうだ。なぜならフラミスの元恋人のほとんどがオランダ人だからだという。ホログラムなので見た目は透き通っている。「ひととなりは、愛敬があって鷹揚、穏やかで思いやりがあり、とても知的」だとフラミスはインタビューで語っている。「彼は毎日もっと学びたいと熱心で、記憶力は驚異的。けんかをしても仲直りするのが上手だ」