子どものベランダ転落事故どう防ぐ 「高さ1.1メートル以上」戦後から変わらない法規制#こどもをまもる
ベランダは構造によって大きな違いがある。腰壁(ベランダの壁)が高く作られていればよいわけではない。上部に手すりが設置されていれば、それが子どもにとっての登るための「手がかり」となり得る。一方、腰壁の低い位置がパネルなどで仕切られている構造のものもある。そこに段や隙間があれば、それが子どもにとっての「足がかり」になってしまう。また、ベランダ内に置かれたエアコンの室外機が「足がかり」になってしまうケースもある。 それぞれ構造のパターン別に対策が必要だと大野さんは注意を促す。 「対策はすでにマンションが建った後に行うので、『後付け』でできるものでなければなりません。また、マンションのベランダは共用部になっていて、自分の希望だけで勝手にできない場合もあります。その点も考慮して対策を考えていかないといけません」
転落事故を防ぐためには、行政の対策も不可欠だ。国や自治体の取り組みは少しずつ進められている。 国土交通省では昨年から、共同住宅を対象に、子どもの転落事故防止に向けた手すり設置などに対して、新築では10分の1、改修では3分の1(上限あり)を助成する事業を始めた。 東京都では今年4月から、「『子どもを守る』住宅確保促進事業」として補助金を用意する。マンションに住む家庭を対象に、ベランダの段差解消工事や転落防止の手すり設置などの安全対策に対して工事費の3分の2を補助する(上限30万円)。 だが、先に紹介した窓からの転落防止に大きく貢献したニューヨーク市の施策──窓に鉄柵設置を義務づける──に比べると、日本のベランダ対策は手すり設置への補助金などにとどまり、現状では限定的だ。ベランダ外壁の高さ基準を引き上げたり、「足がかり」になり得る構造面の規制を見直したりする法規制がなされれば一定の効果が期待できるはずだが、そこまでの動きには至っていない。 こうした背景として、前出の瀬戸さんは法規制を強化する根拠となる実証結果が現時点では不十分だと語る。 「もちろん『国による法規制を』という意見もあるでしょうが、それを進めるだけの十分なエビデンスが今のところない。一方、事故が発生しているならば、貸主の責任も問われるべきです。十分な対策をせずに貸し出している可能性があるのだから」