子どものベランダ転落事故どう防ぐ 「高さ1.1メートル以上」戦後から変わらない法規制#こどもをまもる
そのベランダには法令で定められている基準がある。柵の高さは1.1メートル以上。これが建築基準法施行令126条に記されているのだ。 <屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない> 問題はこの法令の規定が時代に合っていないことだ。 建築基準法施行令は建築基準法を施行するために1950年に定められた政令だが、この当時、いまでいうマンションのような高層の集合住宅は一つも存在してなかった。ところが、現在ではマンションと呼ばれるタイプの集合住宅は全国で700万戸近くに上る。これほどまでに状況が大きく変わっているにもかかわらず、1.1メートル(110センチ)以上の手すり、壁、柵という高さの規定は当時のまま一度も改正されていないのだ。 状況の変化はほかにもある。例えば子どもの身長。1950年当時の5歳男児の平均身長は104.4センチだったが、その後伸びていき、1977年に110センチを超えると以後は110センチ台で推移している。
ベランダの柵の高さ1.1メートル(110センチ)とは一見、子どもの転落防止には十分な高さのように思える。4歳児の平均身長を考えると、大人にとってベランダの柵の高さが110センチで安全ならば、4歳児はもっと低くても問題ないように見える。しかし、瀬戸さんは「決してそんなことはない。子どもは『小さな大人』ではないのです」と警鐘を鳴らす。 「大きな理由は『体形が違う』ことと『行動特性が違う』ことの2つです。子どもは相対的に頭が大きく、大人よりもバランスが悪い。そのため、身を乗り出すと転落しやすい。さらに、子どもは歩けるようになる以前から高い所に登りたがる行動特性がある。子どもは乳児期の頃から探索行動に出る習性があります。それは自らの限界に挑戦して成長するためです。その習性は親が言っても止められないし、止めることは成長するうえで良いことでもありません」 ベランダの実情と子どもの特性については、これまであまり顧みられてこなかった。しかし、実際にそれらを調査した人たちがいる。