子どものベランダ転落事故どう防ぐ 「高さ1.1メートル以上」戦後から変わらない法規制#こどもをまもる
ベランダの柵を高くするだけでは不十分
子どもは高い所に登りたがるというが、ではいったいどのくらいの高さを登ることができるのか。 子どもの傷害予防に関する活動をしているNPO法人「Safe Kids Japan」が2021年11月に実験を行った。建築基準法施行令の110センチより高い、120センチ以上の柵(壁)の高さを何歳の子どもが乗り越えられるのかという実験だ。
参加したのは、3歳児、4歳児、5歳児のクラス別に分かれた、それぞれ40人前後の子どもたちだ。まず120センチの高さのベランダの柵を30秒以内に乗り越えられるかどうかを実験した。次にそれを130センチにした場合、140センチにした場合でも試した。実験は裸足で行われた。 すると、3歳児では120センチの柵を65.7%と3分の2近い子たちが乗り越えてしまった。だが、130センチにすると20.0%しか登れず、140センチにすると登れた子どもは一人もいなかった。4歳児でも130センチでは50%と半数が乗り越えてしまったが、140センチでは27.5%と約4人に1人程度に減った。つまり、高くするほど予防効果が見られたのだ。
実験グループの一人であるSafe Kids Japanの理事で産業技術総合研究所研究員の大野美喜子さんは次のように振り返る。 「4歳までの低年齢の子どもには『柵を高くするだけ』で、大きな転落予防効果が見られました。一方で、5~6歳の子どもでは140センチにしても7割以上の子どもが登れた。そうなると、『柵を高くするだけ』では不十分で、もうひと工夫必要でした」 では、どのような方法がよいのか。Safe Kids Japanではその後、転落予防にどんな方法が効果的なのかも検証した。
「手がかり」「足がかり」をつくらない
その実験の一つがベランダの柵に登らせないための工夫だ。ベランダの柵には、子どもが足をのせたり掛けたりして「足がかり」になり得る構造のものがある。大野さんは、こうした「足がかり」や「手がかり」を作らないことが必要だと説明する。 「転落事故の再現実験も行いましたが、ベランダに『足がかり』を作らないことがまず大事です。それに加えて、笠木(柵や手すり壁の上部を覆う部材)がクルクル回転するようにして『手がかり』をなくすことも予防効果がありました。ただ、製品化するには、どういった素材にするかなど仕様を細かく検討していく必要があります」