子どものベランダ転落事故どう防ぐ 「高さ1.1メートル以上」戦後から変わらない法規制#こどもをまもる
対策が難しいベランダからの転落
「子どもの転落事故は大きく、『窓』と『ベランダ』からの2つのパターンに分けられます」 公益社団法人日本技術士会登録「子どもの安全研究グループ」の瀬戸馨会長は語る。さらにその2つでも、窓からのほうがベランダより圧倒的に多い。前述の東京消防庁管内で発生した子どもの転落事故70件(5年間)のうち、実に8割以上が窓からの転落だった。 出窓であってもベランダと同様、ソファやテーブルなどを「足がかり」にして子どもは登ることができてしまう。危険性は想像以上に大きい。
ただ、窓からの転落事故に関しては、海外で成功した行政の対策事例があると瀬戸さんは指摘する。1970年代のアメリカ・ニューヨーク市だ。当時、ニューヨーク市では窓からの子どもの転落死が相次ぎ、社会問題になった。そこで、市当局は「Children can’t fly 」」(子どもは空を飛べない)と題した対策キャンペーンを始めた。 「具体的には、10歳以下の子どもが居住する住宅では窓に鉄柵をつけることを義務づけるという対策でした。年に1回くらい職員が点検に来る徹底ぶりで、その結果95%ほど被害を減らすことができたのです」 日本でも窓については柵を設置したり、幼児が開けないよう二重鍵を設置したりするなどの対策が導入されたことはある。現状では、そうした対策ができていない家が依然として多いため、窓からの転落事故が起きているが、ニューヨーク市の対策のように実効性の高い予防施策が過去にあったのは事実だ。 一方で、対策が難しいのがベランダだ。ベランダは日本特有の課題でもあると瀬戸さんは言う。 「海外では、そもそもマンションにベランダがないところが多い。マンションの屋上からロープを垂らせば侵入できてしまうので、防犯上あまり設置されていないのです」 歴史的、文化的な事情もある。日本では戦後、公営住宅が急速に建設されたが、洗濯物を干すためにベランダが設置され、それが集合住宅の基本形になったとも言われる。欧米では洗濯物は乾燥機で乾かすのが一般的だが、日本では天日干しが好まれる。そのため日本ではほとんどのマンションやアパートなどの集合住宅でベランダが設置されている。