子どものベランダ転落事故どう防ぐ 「高さ1.1メートル以上」戦後から変わらない法規制#こどもをまもる
目を離した一瞬の隙に子どもが自宅マンションのベランダから落ちてしまった──。そんな不幸な事故が後を絶たない。ベランダや窓からの転落事故を防ぐためには、どうすべきか。子どもには大人の想像以上に柵を乗り越える力があるという専門家の指摘がある一方、そもそも終戦後の1950年以来変わっていない法令基準の問題も浮かび上がってくる。子どもの転落防止に取り組む人たちを取材した。(文・写真:ジャーナリスト・小川匡則/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
一瞬の隙に室外機に登り、窓を解錠し…
今年5月26日夕方、山口県防府市で4歳の男児が転落して死亡する事故が発生した。13階建てマンションの12階にある自宅ベランダからだった。 事故当時は家族も家にいたが、目を離した隙に男児はベランダに出てしまった。ベランダには約120センチの外壁があったが、ベランダに置かれたエアコンの室外機に登り、そこから壁を越えて転落したものとみられている。 昨年11月2日午後には千葉市美浜区の48階建てマンションで1階エントランスの屋根部分に人が倒れているのが発見され、119番通報された。 亡くなったのは、25階に住む間もなく3歳になる男児。男児はベランダにある高さ120センチの柵を越えて、転落した。両親は外出中だった。窓の鍵は閉められていた。にもかかわらず、男児はそれを解錠してベランダに出てしまった。
子どもの転落事故が後を絶たない。「子どもを見守っていた」「窓の鍵を閉めていた」など家族は事故が起こらないように注意を払っていた。だが子どもは一瞬の隙に、思いもよらない形でベランダの高い柵を越えていく。 東京消防庁の管内では、2018年からの5年間で5歳以下の子ども70人が住宅などの窓やベランダから転落し、医療機関に救急搬送されている(このうち重症または重篤だったのは計17人)。 こうした転落事故は決して人ごとではない。東京都が1都3県でベランダのある住宅に子どもと住む人を対象に行った調査では、子どもがベランダから転落した経験を持つ人が1%いた。「転落しそうになったことがある」、「転落した・転落しそうになった、までは至らないが、ヒヤリとした経験がある」と答えた人も合わせると14.9%に上る。同調査では、以下のような事例が報告されている。 <子どもから目を離した隙にまだ自分で開けられないと思っていた窓を開け外に出ていた。そして隙間から手を出していた。体が小さいので隙間から転落するのではと思った>(子どもは1歳) <子どもが自分で鍵を開けてベランダに出て、近くにあったステップ台に上がり、手すりにつかまって外を眺めていました。私は室内で洗濯物を畳んでいました>(3歳) <私がトイレに行っている間に主人と息子が2人でリビングにいて、主人がスマホをみている間に息子が一人でベランダに出て椅子に登り身を乗り出して駐車場の車をみていた>(1歳) こうした転落事故には、どういった対策が必要とされているのだろうか。