BIGBOSS采配裏目?!阪神に3回4失点KOされた吉田輝星の”思い出の甲子園”先発は正しかったのか?
いきなり1回に迎えた一死一、二塁のピンチ。4番の佐藤を144キロのストレートで三塁ゴロに抑え、続く絶好調の大山は、カウント2-2からフォークを連投して空振りの三振に斬って取った。 気合のこもったガッツポーズが飛び出したが、大山に対しての配球は、ほぼ外角一辺倒。4球目に1球だけインサイドを143キロのストレートで攻めたが、スムーズにバットを出した大山にレフトポールの左に大ファウルを打たれた。次の打席への布石となる厳しい内角球を使えていなかったのである。 2回に立ち直ったかのように見えた吉田だったが3回につかまる。二死一、二塁から佐藤を警戒するあまりフォークを3連投。虎の主砲が苦手とする内角球も、高めのストレートも1球も使わなかった。若きバッテリーの慎重さが配球ミスを呼ぶ。カウント2-1から甘く入ったストレートをライト前へ痛打され先に点を失う。 そして2日前に1試合3本塁打を放っている大山である。カウント1-1から内角に投じたストレートをレフトスタンドへ運ばれた。1打席目のファウルよりもボールひとつ甘く入った内角球。その分ファウルではなく3ランとなった。 スポーツ各紙の報道によると、試合後、吉田は「完璧に(インコースを)狙われていた」と悔やんだそうだが、最終的にフォーク勝負のプランだったのであれば、内角球は、ボールゾーンに投じなければ危険であることを1打席目のファウルから察知しておかねばらなかった。 吉田は、大旋風を巻き起こした金足農高時代には、味方についてくれた母なる甲子園の大観衆が、今度は敵に回り、まったく違った雰囲気にのまれてしまったという。思い出の甲子園で痛恨の3回55球KO。今季初黒星で3点台だった防御率は4.20となった。 今季の初登板は3月27日のソフトバンク戦の先発だったが、その後、中継ぎに配置転換されて、9試合連続で無失点を続けるなど存在感を示していた。リリースポイントを上にした新フォームでボールに角度がつき、ストレートとフォークのコンビネーションで1イニングでは威力を発揮していた。だが、登板数は、この日までに20試合。5月25日のヤクルト戦では3失点するなど、疲れが見え始めていた。 1イニング全力であれば通用するストレートも、先発する中では、マックス147キロは表示していたが、打者の手元で伸びてくる持ち味は、すっかりと影を潜め阪神打線に確実に捉えられていた。 フォークも抜けが目だち安定感に欠いていた。 ストレートとフォークの2種類のコンビネーションは、中継ぎでは十分だが、先発をするには球種がひとつ足りない。スライダーはあるが、勝負球、カウント球のいずれでも使えるようなレベルには達していない。まだ先発投手の要件を満たしていないとも言える。 加えて今回の先発への準備期間は、5月29日の巨人戦で1イニング投げた後からのたった1週間しかなかった。 BIGBOSSは、甲子園の魔力で吉田の隠れたポテンシャルがさらに引き出し、中継ぎ感覚で、1イニング、1イニングいけるところまでいけばいいと考えていたのだろうが、それが通用するほど甘くはなかった。