JOC山下泰裕会長が会見(全文2)巨大化した五輪見直すきっかけに
前提条件が大きく変わってしまった
記者2:(英語) 山下:大変素晴らしい質問をありがとうございます。実はこの日本選手団、オリンピック目標金メダル30個、これを決定したときのその責任者、選手強化本部長は私でした。で、前提条件がございます。それは2017年、2018年以降、日本代表になろうであろう選手たちができる限りの準備をして、万全の準備の下に大会に参加できた、その場合にどれぐらいの成果、メダル等、入賞等、金メダルも含めて、期待できますかっていうことをかなり細かく各競技団体に確認して、これ、8カ月ぐらい掛けて、それをまとめ上げて、それから、目標はかなり高いけども、30個いけるということで、目指そうということで最終的にはJOCの目標になりました。 しかし前提条件が大きく変わってしまっているんですね。日本の選手にとっても万全の状況で臨める大会ではなくなってきている。やはり海外もそうだと思うんですけど、国際大会の経験がない、競技会の経験がないというのは選手たちにとって非常に大きな不安です。それからもう1つ。海外の選手たち、ライバルと思われる選手たちがどれぐらいの準備をして、どういう、今、状況にあるのかっていうのも、これを把握するのもほぼ不可能に近いです。大会もかなり制限されてきて、交流もなくなってきております。ですから、この前提条件がまったく壊れた中で、この30個っていうものを求めていくということに私はどれだけの価値があるかと、そう思っています。
金30個を達成することが重要ではない
日本のマスコミからは、であれば増やすとか減らすとか再調整する必要があるんじゃないかっていう質問が出ましたけど、そんなことに掛ける時間なんかないし、掛けたって外国の選手たちの状況なんか分かりっこない。それよりやるべきことは山ほどある。ですから30個を達成することが重要かと言われますと、私はノーとはっきり明言したいと思っています。 この1年間、コロナ禍で大会が延長になったあと、JOCの強化に関わる人たち、これ、団長、それから総監督も含めて、メダルの数ではなくて、選手たちがこの限られた環境の中でいかに準備して、いかに少しでもより良い状況に持っていってオリンピックに参加するか、そしてそこで1人1人が思い切り自己ベストを目指して全力を尽くすか、そのことが重要であるっていうのは、もう共通した認識だと私は思っています。言い方を変えますと、日本オリンピック委員会の会長として選手たちがそれぞれの夢に向かって、己を信じて、仲間を信じて、やってきたことを信じて、思い切りチャレンジしてくれればそれで十分です。自分らしく生き生きと輝いてくれれば、それで十分です。 それから日本だけじゃなくて世界がコロナ禍で大変な状況ですから、世界のアスリートも、限られた非常に厳しい条件ですけど、最善を尽くしてベストパフォーマンスを発揮してほしいと、こう思っています。ですから今、もう延期になったあとは30個というのはもう横に置かれた感じで、誰も日本オリンピック委員会の中では、そのことは議論をしておりません。よろしいですか。