残念だが…1月にウクライナ戦争は「リベラリズム」から「リアリズム」に変わる
バイデン退場後のヨーロッパ
しかしながら結局、バイデンのアメリカはプーチンのロシアを屈服させることはできなかった。それどころか、ロシア国内では、「オレシュニク」によって国威が発揚されて、プーチン大統領を支持する保守的な世論が高まってすらいる。 かたや西側主要国の政治リーダーは、事ここへ至ってもなおウクライナ支援の正義を主張し、支援を継続することの必要性を訴えるばかりである。戦闘は収まるどころか、ミサイルとドローンを撃ち合う応酬へとエスカレートしている。一歩踏み誤れば、ヨーロッパを巻き込んだ世界大戦につながりかねない危機と背中合わせの袋小路に陥っている。 やがて海の向こうのアメリカで、バイデン政権が退場する。ヨーロッパの主要国は、エネルギー価格の高騰とウクライナ支援の財政負担が重荷となって、高インフレと不景気のスタグフレーションから抜け出せない。 特に、アメリカに次ぐ第二のウクライナ支援国ドイツの混迷は深い。バルト海底の「ノルドストリームⅡ」パイプラインが何者かによって爆破され、東西ドイツ統一後の競争力を支えた安価なロシア産のガスを奪われた。
ウクライナに平穏は訪れるのか
残されたウクライナは、軍事援助はおろか、財政支援までも止まってしまえば、国家としての存続自体が危ぶまれるだろう。戦時下のウクライナで政府が機能し、経済が持ちこたえてこられたのも、ひとえに西側主要国と、国際通貨基金(IMF)や世界銀行(WB)などの国際機関を通じた融資と送金あればこそのことだった。 ロシアによる侵攻が始まった2022年、ウクライナの国内総生産(GDP)は対前年比でマイナス29%と急落した。ほぼ恐慌状態に陥ったことは疑いを入れない。 この国の経済は、主として東部と南部の石炭と鉄鋼をはじめとする重化学工業によって支えられてきた。その中核を成す一帯をロシアに奪われた。あるいは、ほとんど廃墟と化している。財政の破綻はむべなるかなである。必要な支援は、もはや武器ではない。平穏な日々と復興へ向けたそれである。