モンゴルでも急増、中国人の大量出国が生んだ「ガチ中華」の世界的トレンド
ガチ中華の出現は、中国人の世界各地への大量出国がもたらしたグローバル化のひとつの現象である。欧米先進国はもとよりアジア各国、オセアニアなどの大都市圏でも増加しており、なかでも東京は、世界でも最大規模のガチ中華出店都市だと言えるだろう。 今夏、草原の国モンゴルの首都ウランバートルを訪ねたが、はたしてこの国にもガチ中華はあるのだろうか。そう思いながら市内を歩いたところ、ずいぶん見つかった。 ウランバートルは人口150万人ほどの都市なので、東京に比べれば総店数は少ないが、さまざまなジャンルのガチ中華があり、そのありようは東京と変わらないところも多く、また一方モンゴル固有と思われる特徴もあった。 日本と同じ現象を海外と比較することで、今日のガチ中華のありようを相対化し、客観的に捉え直すことができるのではないか。こうした視点から、ウランバートルのガチ中華の世界をレポートしてみたい。 ■好みに合わせマイルドな味つけに現地化 まず東京でよく見かけるガチ中華の代表は「蘭州牛肉麺(らんしゅうぎゅうにくめん)」である。中国西北に位置するシルクロード沿いの甘粛省蘭州のご当地ハラール麺で、都内にはすでに50軒近くあるが、ウランバートルにも2軒あった。 そのうちの1軒は「Lanzhou Beef Noodles」という料理名そのままの、蘭州出身の中国籍のご主人とウランバートル出身で中国留学の経験があるモンゴル人女性のカップルが経営する店だった。2人は中国で知り合い、ウランバートルで店を始めたという。この店の蘭州牛肉麺はガチな現地風の味つけだった。 ジャンク系ガチ中華の筆頭、アヒルの首や舌などさまざまな珍しい部位を使ったスパイシーな料理「鴨脖(ヤーボー)」の専門店である「白氏鴨脖王」もあった。 鴨脖(ヤーボー)は中国の人たちにとってファストフードのような存在だ。都内では池袋や高田馬場、新大久保など中国出身の若い世代が多い地区に広く出店している。あいにく経営者には会えなかったが、店員に聞くと「中国内蒙古自治区出身者」のようだった。