登山鉄道でゆれる富士山「最大の懸念」は噴火…発信できるのは、「どこで」と「いつ」だけ
2023年の1年間、富士山は、これまでにないほどの注目を集めました。新型コロナによる外出自粛が緩和されての山開きと、観光客・登山客の増加、高山病や遭難といった事故。そして、いま、山梨県では富士山の登山鉄道建設の是非をめぐり、大きな議論が巻き起こっています。 【画像】日本の火山観測は世界トップレベル…それでも、噴火予知は至難ワザ!? この登山鉄道をめぐる議論でも、懸念事項のひとつに「富士山の噴火」という問題があげられています。富士山は、いまや「いつ噴火してもおかしくない」火山として、国や周辺自治体では、もしもに備えて対策を進めていますが、ひとたび富士山が噴火すれば、激甚な災害となる可能性がきわめて高く、ブルーバックス。ウェブサイトでも噴火とその被害に関する記事をお送りしてきました。 いつ、どこで噴火するのか。それを予知することができれば、被害を大きく軽減することができます。しかし、それは可能なのでしょうか。富士山噴火の予知について、新しい研究成果もふまえた解説をお届けします。 *本記事は、ブルーバックス『富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ』から、内容を再構成・再編集の上、お送りします。
「噴火に関する情報」は、何をもとに発表されるのか
ひとたび富士山が噴火すれば、激甚な災害となる可能性がきわめて高い。少しでも被害を軽減するためには、富士山はいつ、どこで噴火するのかをできるかぎり正確に予知することが不可欠である。しかし、それはどこまで可能なのだろうか。最新の研究成果をふまえて考えてみたい。 最初に、火山の噴火を事前に予知するために行われている具体的な仕事を見てみよう。 火山活動が活発になってくると、気象庁から噴火に関する情報が発表される。「○○火山では火山活動が活発になっていますので、十分に注意してください」といった警告がテレビ、ラジオ、新聞、インターネットに流される。 このような情報は、火山の地下の状態をさまざまな手法で観測することによって得られるものだ。そのためには、主に物理・化学・数学の手法が用いられる。 たとえば、火山の下で起きる地震や地面の傾きの変化などを精密に計ることで、火山がいまどのような状態にあり、次に何が起きるかを予測する。こうした作業を「噴火予知」と呼んでいる。