【大学野球】過去と比較しても「一番いい状態」 いよいよ幕を開ける明大・宗山塁のラストシーズン
打撃好調の裏づけとなる3つの理由
過去7シーズンと比較しても、今秋は「開幕前としては、一番いい状態にあります」と笑顔で語る。打撃好調の裏づけとなる3つの理由を、明大・田中武宏監督が明かしてくれた。 まずは、スイング軌道である。 「春のキャンプから、打球を上げようとしているように見受けられたんです。簡単に言えば、トップの位置からヘッドが垂れる。ドジャース・大谷翔平選手のような軌道は、相当なスイングスピード、190キロ近い打球速度がないと実践できません。ウチの学生は150キロ程度。チームとしてやめさせました。ダウンスイングをやる選手を使っていくから、と。宗山もヘッドが残って、良い打球が出ている。元に戻ってきたと言っていいでしょう」 次に、ヒットゾーンである。 「甘い球を逃さず、しっかりと広角に打てている。夏場のオープン戦は、初戦こそ無安打でしたが、それ以降は左右の投手に関係なく、複数安打を放っている。これもチーム全体で徹底していることですが、開幕2週間前からフリー打撃でも制限をかけ、かなり引っ張り込んだ選手は、その時点で交代というルールに。打球方向を決めさせています」 最後に、本塁打である。 「宗山はホームランバッターではありません。ただ、スイング軌道が戻ってくれば、自然と打球も上がってくる。つまり、ヒットの延長線上として、本塁打になるのです。この夏のオープン戦は2本塁打。ソフトバンク・大野稼頭央投手、ENEOS・加藤三範投手と左腕からの一発は内容のある打撃でした。この秋は変な気負いもないと思うので、勝つことに集中できる。ケガなく、終えてほしいです」
宗山は言う。 「良いときは、左投手も関係なく打てる。左腕から長打、本塁打が出たのは良い傾向であることは間違いないです。コースに逆らわないスイングができている。自分の感覚と、実際の打球が近いものになっていかないといけない。打撃フォームで変わったのは、ムダな動きをなくしたこと。コンパクトな回転でパワーを生み出す。言葉で説明するのは難しいですが、しっかり体を使って回転で振るイメージ。そこはずっと、修正してきました」 今春は5試合で4安打。足踏みしていたリーグ史上34人目の100安打まで、あと2本だ。 「記録を狙いにいくというよりは、その場面に応じた打撃、得点に絡められる一打が打てた中で、結果として数字がついてくればいい。勝利のための一打、どれだけ自分が打つかで勝てる確率は変わってくると思うので、そこの責任は大きいです。目の前の1勝をするための打撃ができたらなと思います」 チームを3年春以来のV奪還へと導いた上で「首位打者、ベストナイン、三冠王(打率、本塁打、打点)を追い求めていきたい。1試合、複数打てば、自ずと打率5割に近づくと思うので、そこは目指したいです」と語った。 大安の9月24日、プロ志望届を提出する。宗山は東大戦を前に、丁寧に記入したという。 「小学校時代から『プロに行く』という目標を掲げてきた中で、自分で書いて提出するというのは、一つの重みがある。『覚悟が必要だな』と改めて感じています。ここを目指してきたので、自分にとって野球人生の一つの節目になる」 2024年のドラフト超目玉は「20年に一人の遊撃手」と高い評価を受けている。12球団同時の1位入札での複数球団の競合は確実。すでにオープン戦でNPBスカウトに完全復調の姿を見せているが、神宮にも最終確認に、多くのプロ関係者が熱視線を送るはずだ。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール