思わずウルッときたドリスのいない「ドリス」、「ザ・ロウ」と「クレージュ」でミニマルについて考える 2025年春夏パリコレ日記Vol.2
「セシリー バンセン」はホンマタカシの雪山写真から着想
村上:次の「セシリー バンセン(CECILIE BAHNSEN)」は、変わらないガーリーなシルエットを飽きさせずに見せ続けるのが本当に上手ですね。今回は何より、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」コラボに代表されるアウトドアなムードと、雪山を思わせるアイスブルーなどのカラーパレット、でしょうか?
藪野:そうですね。セシリーはデンマーク出身だし、雪山が身近なのかなと思ったら、実は以前から親交のある写真家のホンマタカシさんが撮った東京近郊の山の写真が着想源になっているそうです。会場にもホンマさんが撮影した雪山の写真が展示されていましたし、まさかのショー音楽の生パフォーマンスもされていましたね。
コレクションはお馴染みのベビードールやフレアシルエットのドレスが主軸なのですが、リップストップポリエステルやナイロンなどを使ったウインドブレーカーやアウトドアジャケット、ショーツ、ダッフルバッグなどが加わることで、新鮮な印象に。何より「ザ・ノース・フェイス」と制作したアイテムは可愛すぎ!売り切れ必至のコラボになりそうです。「アシックス」との協業も継続していますが、「セシリー バンセン」のようなガーリーなブランドとのコラボレーションは、普段スポーツやアウトドアブランドを買わないような新たな顧客を開拓できそうです。
「ラバンヌ」はメタルの質感を追求
村上:お次は「ラバンヌ(RABANNE)」。テーマは、「マテリアル・ガール」。元々はマドンナ(Madonna)の曲ですが、ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)は、「ラバンヌ」らしいメタルというマテリアルの質感を追求。当然、メタリックな硬質感や冷たさを布帛やウエアでどのように追求するのか?がフォーカスポイントです。
コレクションは、ベビーピンクならぬベビーブルー、メタルに通じる涼やかさがありつつも、メタルとは異なる優しさを感じさせる色合いのシャツやデニムで始まりました。シャツ地で作ったアノラックにも、アイスブルーのようなベビーブルーのストライプを加えます。今シーズンは、レースの中でも最高峰とされるギュピールレースをふんだんに使いました。でも、それだけでは「ラバンヌ」らしさが表現できません。そこでジュリアンは、ギュピールレースなど、さまざまなファブリックに銀箔をプリント。ジャケットとシャツ、それにケーブルニットなどのプレッピーや装いにメタリックな質感をプラスしました。プリーツスカートは、プリーツを畳んだ状態で銀箔プリントするので、アイスブルーとシルバーが交互に並びます。今シーズンやたらと見かけるルレックス(金属糸)のニットは、お手のもの。ボックスシルエットのジャケットには、錦糸で刺繍を施し、タンクトップにはメタルスタッズを大量に打ち込みます。