なぜ“白毛のヒロイン”ソダシのダートへの“二刀流挑戦”は失敗したのか…2番人気に支持されたチャンピオンCで12着と惨敗
2週前には実際に栗東のダートコースで併せ馬を行い、オープン馬に先着。高い適性を示した。その後は2週続けて坂路で好時計をマーク。特に今週は800m51秒8、ラスト200mはこの日最速の11秒8でフィニッシュしていた。秋華賞の後遺症が心配されたが、リフレッシュしてしっかり立て直したと考えられていた。 「落ち着いているのが何より」と須貝尚介調教師も手応えを感じていた。癖の強かったゴールドシップを管理していた経験が生かされていたのだろう。 最終調整後に主戦の吉田騎手は、「リアル二刀流」が今年の流行語大賞に選ばれたエンゼルスの大谷翔平を引き合いに出し「今年は二刀流という言葉も話題になっているので、何とかソダシにも二刀流になってほしい」と意気込んでいた。 だが、ファンは、「芝で強い馬もダートの専門馬には勝てない」という“競馬あるある”に反応。信頼度を示す面もある単勝オッズもどんどん懐疑的になっていった。レース前日の4日午前11時での単勝オッズはソダシが2.4倍で1番人気。テーオーケインズが4.8倍で続いていた。それが午後5時30分になると、ソダシが2.7倍、テーオーケインズが4.2倍と徐々に差は詰まり、最終的にはレース直前でテーオーケインズが3.3倍、ソダシが4.5倍と逆転している。 これまでも桜花賞馬キョウエイマーチや高松宮記念を勝ったキングヘイローなどが果敢にダートのG1に挑戦したものの失敗に終わっている“黒歴史”もある。 芝とダート両方のG1を制覇しているのはJRAによるとグレード制が導入された1984年以降で、わずか5頭しかいない。しかも、父クロフネをはじめ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドン、モズアスコットしか成し遂げておらず、すべて牡馬の英傑だ。
基本的にダートに強い馬は、スピードよりパワーに優った“ムキムキの筋肉馬”が向いているとされている。砂は芝と違い、クッション性が高く、しかも、9センチの深さの砂に足が埋まるので、足抜きの良さが求められ、繋(つなぎ)と呼ばれる蹄と脚をつなぐ部分が短く立っているタイプが適しているとも言われている。また先頭に立てば無縁だが、後続馬は砂をかぶるため、それを嫌がる馬も多く、ダートで勝つためには経験が必要で決して甘くない世界なのだ。 今回は“統一ダートG1馬”が大挙8頭もスタンバイしていた。レースレベルも高く、1着テーオーケインズ、2着チュウワウィザードは、もちろん、3着に入った7歳アナザートゥルースも大きな勲章こそないものの、兄はG1馬で自身もダート歴戦の猛者だった。 また一般的には、ダートでは先行馬が有利ともされているが、中京1800mダートで開催されるチャンピオンズカップでは、逃げ馬には不吉なデータがあった。近年では2017年コパノリッキー、2019年インティの3着が最高。昨年、前半1000m60秒3で逃げたエアアルマスも10着に沈んでいた。 陣営が言うようにソダシは、キャリアのなさを露呈したことに加えて、結果的に見れば、秋華賞の惨敗の影響を引きずり、また1800mの距離もベストとは言えなかった。 白馬のヒロイン、ソダシの2021年の戦いは連敗で終了した。 陣営は、まだ今後の方向性を明かしていないが、二刀流に再チャレンジすべき舞台はある。来年2月に東京競馬場の1600mコースで行われるフェブラリーステークスだ。マイル戦は、G1で2勝している得意の距離。しかも、今回一度ダートを経験したというプラス材料もある。日ハム時代から、8年目にしてメジャーで花開いたエンゼルスの大谷翔平が、そうだったように、二刀流を成功させるためには、「決して諦めない」という我慢強さも必要なのかもしれない。