「地方には仕事がないから」だけでは説明できない…「貧しい街・東京」に若者を吸い寄せる"キラキラ感"の魔力
■「年収1000万円が約束された大企業勤め」以外の若者は苦労する 東京はたくさんの若者を搾取することでその栄華を誇っている街であることを前提として理解しなければならない。繰り返し強調するが、東京は“平均”所得を大きく押し上げる一部の人びとを除けば、統計的に見れば概して「貧しい街」なのである。 ある若い人がいたとする。その人がもし東京にある大企業に就職が内定していて、早々に年収が1000万を超えるようなキャリアを歩む見込みがあるのなら、東京で暮らしてもきっと搾取とは縁のない暮らしを送ることができるようになるだろう。だがそういう見通しがとくにないのなら、この街に来ることはあまりお勧めしないし、何年か暮らしてもキャリア展望が開かず自分の生活のレベルが上向かなかったなら、さっさと「見切り」をつけて離れるのも真剣に検討するべきだとさえいえる。 東京になんとなくやってきて、若い時間を「安い人材」としてズルズル過ごし、ライフステージもライフプランも空白のまま惰性で過ごしていると、あっという間に若い時間は底をつき、本当に取り返しのつかないことになる。もっとも「資本家」の立場からすれば、そうやって考えなしで東京にだらだら留まる人がたくさんいてくれたほうが懐が潤って、便利で豊かな暮らしが引き続き送れるので願ってもないことなのだろうが。 ■東京にマイホームを持つことはもはや不可能 将来的な推計を見ると、これからも東京に若い人口が全国から流入するトレンドは変わらない。東京の物価や地価や住宅価格は(海外の富裕層の投資や移住も活発化していることから)ますます上がるだろうし、東京の「キラキラ感」に呼び集められた若者は、ますます貧しい暮らしを強いられることになる。 東京に集まる若者の中央世帯水準では、もはや東京の住宅を購入することは不可能になってきているし、周辺3県(神奈川県・千葉県・埼玉県)で東京に近接する都市部の不動産価格も急激に上昇してきている。「いやいや郊外の中古や空き家(古屋)を買えばいいじゃないか」といった意見もあるが、それらのなかには現行法の耐震基準を満たしていない物件も少なくはない。 旧耐震のマンションならまだ都心でもギリギリ手が届く範囲(高くても4000万円前後)に収まっているが、その購入を若者に安易に推奨している人は、良心が痛まないのだろうか。近い将来起こるとされる首都直下型地震での倒壊リスクは高くなる。若者は新しいマイホームを持てず、耐震基準の劣る、使い古された「お下がり」の住まいを、それこそひと昔前の新築一戸建てと同じかそれ以上の値段で購入しなければならないというのは、なんとも馬鹿馬鹿しい話に思える。 このように書くと奇妙かもしれないが、所得水準も上がらない結婚もできないマイホームも持てない子どもも持てない人生の先行きが見えないそういう若者が大勢暮らす貧しい街だからこそ、東京は日本のどこよりも「豊かな街」になっている。