「謙虚は美徳ではない」。伊藤忠CEOが断言、仕事ができる人に共通する5つのこと
世界的な原料高騰が続く中、追い風を受ける日本の商社業界。中でも伊藤忠商事は財閥系以外の総合商社として時価総額を大きく伸ばしている。なぜ、伊藤忠は圧倒的な成長を遂げているのか。その答えの一つは、創業以来受け継がれてきた「商人」としての心構えにある。 【全画像をみる】「謙虚は美徳ではない」。伊藤忠CEOが断言、仕事ができる人に共通する5つのこと 本連載では、岡藤正広CEOをはじめ経営陣に受け継がれる「商人の言葉」を紐解きながら、伊藤忠商事がいかにして「商人」としての精神を現代に蘇らせ、新たな価値を生み出しているのかを深掘りしていく。 前回まではビジネスパーソンが稼ぐために役に立つ言葉を集めた。だが、今回は商人ならば言わない言葉、やらない行動を紹介する。こうした言葉を使ったり、行動をすると稼げないし、また儲からない。
1.外部環境のせいにしない。社内ルールを変えろとは言わない
伊藤忠に限らず、どの会社にも社内ルールがある。また、数々の法令を遵守することも働く人間の責務だ。会社は「遅刻はしない」とか「休むときは連絡する」といった集団を維持するルールを制定する。そして、会社に所属する人間はルールを守らなくてはならない。 それなのに決まっているルールに対して、文句を言う人間がいる。ルールを変えるために自分の都合や外部環境を持ち出してくる人間もいる。 例えば……。 「私は非管理職ですから海外出張はエコノミークラスです。しかし、課長、私は時差ボケが激しいから少しでも休みたいです。ビジネスクラス、なんとかなりませんか」 「社長、大幅な円安が続いています。ですから、今期だけは予算目標を減額していただきたいです。また、予算目標の減額が不可能であるならばスタッフの増員をお願いしたいです」 これと同じとは言わないが、これに類したことを言ってくる人はいる。自分の都合、外部要因を主張して決まっているルールを変えようとするわけだ。 また、仕事に着手する前ならまだしも、1年の半分が過ぎてから、「そもそも目標の予算が多い」と不満を漏らす人がいる。そういう人間はどこの組織にもいる。 しかし、商人であろうとするならば社内ルールに異を唱えてはいけない。外部環境のせいにすると上司や周囲からの評価を落とすだけだ。 社内のルールはスポーツのルールと同じ。サッカーは11人でやるのがルールで決まっている。それなのに、「うちは弱いから10分間だけ12人でプレーしたい」と言ってくるチームはいない。 社内ルールは自分の都合で変えることはできない。変えるための提案をしようとすること自体が間違っている。 岡藤はこう言っている。 「僕の経験から言うと、仕事ができない人間ほど、社内のルールに対して細かい文句を言ってくる。会議の最中に予算が達成できない理屈ばかりをえんえんしゃべる。そんなことを聞いているだけでムダだ。誰でも戦う条件は同じなんだから。だって、これこれこういうわけで、僕のシュートは外れましたなんて言うサッカー選手はいないだろう。結果が出ない理由を見つけてくることに情熱を傾けるくらいなら、売り上げを上げることを考えればいいのに、外部環境のせいにする。結果が出ない理由を社内ルールや外部環境のせいにしたって面白くない。スポーツも仕事もルールがあり、みんながそれを守っているから面白い。ルールのない世界では公平な競争なんてできない。 そして、もし、本当に社内ルールがおかしいと思うのであれば、まずは他人が文句を言えないくらいの結果を残すこと。結果を残して出世して、ルールを見直す立場になることだ。僕だって若い頃は社内の慣習やルールがおかしいと思った。例えば、フレックスタイム。フレックスタイムを作ると、みんな出社が遅くなる。お客さんが朝の9時に電話をしてきても、電話に出る人間はいつも同じなんていうのはおかしい。 フレックスタイムにすると、楽な方に流れてしまう。これは僕が社長になってからすぐにルールを変えた。フレックスタイムではなく、朝型出勤にした。 話はズレたけれど、社内ルールは守ること。仕事の結果が出ないのを外部環境や他人のせいにしない」