ブラック職場と化す教育現場…それでも私たちが「教師」であり続けるワケ【現役教師の証言】 #令和に働く
保護者対応…それって教師の仕事ですか?
保護者などの対応で大きく時間が割かれることも、教師の長時間労働を助長させている要因のひとつです。 福井「公園で遊んでいた子どもたちが喧嘩になったから、先生、どうにかしてくださいとか、近所の子どもたちがうるさいから学校がなんとかしろとか。保護者やご近所の方から電話がかかってくる。『その問題を解決するのは教師の役目なんだろうか?』と、首を傾げることも多いです」 白石「今の配属校には変わった保護者はいない印象ですが、前の学校(白石さんは2校目の配属)には、いわゆる、モンスターペアレントと呼ばれる保護者がいました。学校のことでも家庭のことでも、何でも教師に解決を求めてくる。ただ大抵そういう保護者は教育熱心な人が多く、過剰な心配が根底にある。だから邪険にすることはできないんです」 どこまでが教師や学校の対応の範囲なのか、多くがグレーゾーンです。たとえば、下校中のトラブルは指導の範囲内ですが、下校後、児童同士で遊んでいるなかで起きたトラブルはどうでしょう。そのまま放置しておくと児童の関係性にマイナスになるからと、教師が間に入って調整をする……そのような対応が多いのではないでしょうか。 このような曖昧さによって、本来、家庭や地域の領域であっても、子どもたちに関連することは教師・学校は対応に迫られる……教師が疲弊していく要因のひとつのようです。
他では決して感じることのない「教師という仕事のやりがい」
話を聞けば聞くほど、教師の大変さが浮き彫りになり、なぜふたりは教師を続けているのだろうかと疑問が湧いてきます。白石さんは「なんだかんだいって、安定している職業であることは魅力のひとつですが」と前置きをしつつ、言葉を続けます。 白石「卒業した子どもたちが『先生にはお世話になりました』と会いに来てくれる。教え子の結婚式に呼ばれたという先生もいます。そんな職業、ほかにないですよね」 福井「ついこの間までできなかったことができるようになる……子どもの成長力には驚かされることばかりです。子どもの成長に自分が少しでも関わることができていると考えると、大きな喜びを感じますよね」 白石さんも福井さんも、教師でなければ得ることのできない「やりがい」が、教師を続ける原動力だといい、「ほかの先生方もきっとそう」と話します。 しかし、そんなやりがいのある職業でありながら、ドロップアウトしてしまう教師がいるのはなぜなのでしょうか。この疑問に対しては長時間労働などといった労働環境のほか、「配属される学校によるのでは」と指摘します。 白石「前の学校では若い先生が多く、何か困ったことがあったり悩みがあったりしても、相談をしたり、助けてくれたりする人はいませんでした。みな、自分のことだけで精いっぱい。そういう環境なら、どんなにやりがいのある職業であっても、潰れてしまうのではないでしょうか」 福井「私の同期のなかにも、病気で休んだりしている人もいます。真面目すぎるなど、その人の性格によるところも大きいとは思いますが、問題を抱え込んでしまうのは、環境によるところも多いですよね」 ――学校なんて、どこも同じなのではないのだろうか? そんな疑問に対し、ふたりとも「学校によってまったく違う」と口にします。 白石「いま配属されている学校は相談できたり助けてくれたりする先輩はいるし、同年代の先生もいます。日々の愚痴は同世代でないと共有できず、そのような存在はとても貴重です(笑)。私はまだ2校目ですが、配属される学校によっては今後、自分も潰れてしまう可能性はゼロではないですよね」 最近、“配属ガチャ”という言葉が浸透しています。新入社員が希望する勤務地や職種に配属されるか分からないことを指す言葉で、配属先によってプラスにもなればマイナスにもなり、その後の社会人人生を大きく左右すると言われています。それは教師の世界でも同様。いうなれば“学校ガチャ”。配属校によって教師人生は大きく左右されるようです。