全巻重版!「ノラ猫は5年生きていればラッキー」厳しい環境で生きるノラ猫2匹が猫嫌いの女性に出会う。完結後も愛され続ける珠玉の猫マンガ【書評】
ノラ猫として生きる猫たちに、この世界や私たち人間の姿はどのように映っているのだろうか。地域猫を見守るTNR活動や餌場の管理といった「猫たちを思った活動」が行われようと、その真意が彼らに伝わるかは別問題。信頼関係を築くのは容易ではないだろう。 【漫画】本編を読む
「5年生きてたら、かなりのラッキー」というノラ猫たちのリアルな生き様を描き、猫と人間の関係にそっと寄り添う物語が『ゴジュッセンチの一生』(白川蟻ん/KADOKAWA)である。 ノラ猫の七生(ななお)とマチは、初めて迎える冬をどう乗り切るかに必死。共に日々を懸命に生きていた。そんなある日、猫嫌いの人間・成田淑乃(よしの)と出会う。 やがて淑乃は、七生が亡き婚約者の愛猫だったことに気づく。淑乃は2匹と関係を築こうと歩み寄り、2匹もまた、警戒心を抱きながらも彼女との交流に興味をもつ。 淑乃の優しさに触れ、束の間の平穏を得る2匹。しかしノラ猫の世界は決して優しい場所ではない。悲しいかな、なかにはノラ猫に対して残酷な行動を取る人間もいる。2匹に訪れる数々の試練、彼らの幸せを願う淑乃の思いが時に報われないこと。それらがページをめくる手を止めさせるほど、胸を締めつける。 猫たちが「5年以上生きること」よりも切実に望んでいるのは、「自分だけの居場所」や「温もりを分かち合える誰か」なのだ、と本作は教えてくれる。本作を読み終えたとき、「全てのノラ猫たちを幸せにできなくとも、目の前にいる愛猫を今まで以上に大切にしてあげよう」と心に刻む人も多いだろう。 2019年に完結した本作は、2024年に全3巻の重版が決定。静かに、しかし着実に広がる感動の波が、その評価の確かさを物語っている。新しい猫マンガが次々と発表される中で、ぜひとも読み継がれてほしい珠玉の名作である。 文=ネゴト/ Micha