戦時中供出の鐘が80年ぶりに復活、村に響く「平和への祈り」 大みそかには除夜の鐘も
奈良県山添村春日の高野山真言宗寺院「やまぞえ不動院」に、約80年ぶりに鐘楼が復活した。同寺では戦時中の昭和19年1月に鐘が供出され、鐘楼も朽ちてなくなっていたが、地域住民らからの要望を受けて再建。「長らく鐘をつく機会のなかった地域の人についてもらいたい」と、大みそかには希望者全員に除夜の鐘をついてもらう。 【画像】境内再建の参考となった古図 「平和への祈り、先祖への供養、幸せを運ぶ思いを込めて鐘の音を響かせたい」 今月7日に営まれた鐘楼の落慶法要で、住職の前川良基さん(51)は地域住民や関係者ら約200人の参列者らにこう呼びかけた。前川さんに続いて参列者が次々と鐘をつくと、「ゴーン」という音が村に響き渡った。 平成19年に同寺の22代目住職として就任した前川さんは、荒れ果てた境内を目の当たりにし、寺の復興に着手することを決意。村教育委員会が所蔵する寺の古図を参考にしながら檀家(だんか)らから寄付を募り、27年に庫裏を再建し、31年に本堂の建て替えを行った。 そうした中でも鐘楼は、信者や地域住民から「除夜の鐘が聞きたい」や「昔は鐘があったと聞いている。なんとかならないか」と再建を望む声が度々上がっていた。石垣しか残っていなかった鐘楼を今年11月に建て直し、今月に約600キロの鐘を設置。鐘には、寺の本尊である不動明王にちなみ、「南無大聖不動明王」の銘が刻まれている。 村によると、村内には約30の寺があるが、多くは奈良市など近隣にある寺の住職が管理を兼任している状態という。前川さんは「鐘がある寺も多数あるが、村の人が除夜の鐘を鳴らす機会はあまりなかったのではないか」とし、「お参りする方々に鐘をついてもらいたい」と話している。 31日は、午後11時から除夜の鐘をつき始める。回数に制限は設けず希望者全員についてもらう予定。問い合わせはやまぞえ不動院(0743・85・0171)。(木村郁子)