ドイツは”もうダメ”かもしれない…既存政党への不満が高まる中、権力闘争に明け暮れるかつての”優秀な産業国”の惨状
かなわない「州民の願い」
そこで社民党が、「AfDと意見を共にするような政党は信頼できない」といきり立って交渉を中断。つまり、民主主義国ドイツでは、動議の「中身」ではなく、AfDと意見を共にするか否かが、決定要因の最上位に据えられている。 その後、11月6日、CDUと社民党はBSWを排除し、2党で交渉を再開。もちろん完全な過半数割れで、将来の混乱は目に見えている。そんなわけで、選挙からそろそろ3ヵ月になろうとするのに、ザクセン州の連立政府はまだ成立していない。選挙のやり直しもあるかもしれない。 一方、やはり9月1日に州議会選挙が行われたチューリンゲン州はというと、こちらはAfDが大差で第1党だったが、負けたはずのCDUが「民主主義を標榜する政党では自分たちが第1党」という屁理屈で、AfDを外した政権を作ろうと懸命だった。ただ、そうなると、ここでもやはり、泡沫政党に成り下がった社民党とBSWに声をかけるしかなかった。 その結果、11月22日、チューリンゲン州では結局、CDU、社民党、BSWの3党連立政権が成立した。左派政権に愛想を尽かしてCDUやAfDを選んだはずの州民の願いは、ここでも叶わなかったわけだ。さらにいうなら、この新政権は、全議席のちょうど半分にしか届いておらず、今後、州議会での決議のたびに、AfDか左派党の支持を必要とする。政治は間違いなく混乱するだろう。 言い換えれば、AfDが選挙戦の間じゅうずっと、本当に政治を変えたいならAfDに入れてくれとアピールしていたのは嘘ではなかった。それ以外は誰が勝っても、多かれ少なかれ既存の政治が持続する。そして、長年のさまざまな利権も、やはりこれまで通り温存されるだろう。 だからこそ、旧東独の3州でAfDに票を投じた人々の多くは、CDUが考えを改めてAfDと組み、安定した保守政権を立てることを期待していた。また、もう一つの可能性として、AfDとBSWの連立を望む声も結構多かった。