ドイツは”もうダメ”かもしれない…既存政党への不満が高まる中、権力闘争に明け暮れるかつての”優秀な産業国”の惨状
肝心なのは「動議の中身」のはずなのに
ドイツの民主主義が揺れている。 現在のドイツの国会では、国民にとってどんなに有意義で重要な動議であっても、それを提出したのがAfD(ドイツのための選択肢)であれば、断固拒否するのが「民主主義の防衛」ということになっている。つまり、決定的なのは動議の「中身」ではなく、それを「誰が言い出したか」ということ。極めてバカバカしい。こんなものは民主主義とは関係がないどころか、民主主義に反している! 【画像】イギリスで日本の「カツカレー」が“国民食”になっている驚きの理由 AfDはいうまでもなく、“極右”として政界で爪弾きになり、他党やメディアから常に攻撃され続けている政党だ。ただ、現状では、その“極右”はどんなに誹謗中傷を受けても潰れず、刻々と国民の支持を増やしている。さらに言えば、AfDは極右などではない。 もう一つ、AfDほどではないにしても、かなり不当な扱いを受けているのが、新党のBSW(サラ・ヴァーゲンクネヒト同盟)。こちらは24年1月にできた新興の党で、既存の政治を強く批判しているため、やはり各政党から敬遠され、“極左”という烙印を押された。 ただ、9月1日に行われた旧東独の3州の州議会選挙では、新参にもかかわらず、この“極左”BSWが抜群のスタートを切った。ちなみに、BSWの思想は確かに共産主義と一致するところはあるが、私は極左だとは思わない。
鬱積している既存政党への不満
その3州のうちのザクセン州では、CDU(キリスト教民主同盟)が31.9%の得票率で第1党だった。そして、そこに1.3ポイントという僅差で続いたのがAfD(30.6%)。つまり、州民の6割以上が、CDUかAfDという保守の政党を選んだわけだ。そして、第3党はBSW(11.8%)。 この意味は簡単だ。州民は既存の政党に不満を持っており、CDUであれ、社民党であれ、彼らが政権を握っている限り、生活は改善されないと見ている。だから、既存の政党を “カルテル政党”として一刀両断しているAfDやBSWに、望みを託したわけだ。たとえば、CDUがAfDと組めば、ドイツにはようやく保守の政権が立つことになる。 ところが、CDUは未だに、「AfDは非民主的であり、絶対に意見を共有しない、連立もしない」と言い続けている。しかし、そうなると、残りは左派政党ばかりなので、当然、まともな保守連立など望めない。そこで、ザクセン州CDUのクレッチマー代表は、たったの7.3%しか得票がなかったボロボロの社民党に声をかけ、さらに、“極左”BSWまで引き込んで連立交渉を始めた。 そもそもCDUは、メルケルの下で左傾化してしまった自党を保守に戻すと言っているくせに、このままでは、社民党とBSWにさらに左に引っ張られることになる。しかも、AfDに投じられた3割の票は、闇に葬られるわけだ。何かおかしくないか? 10月25日、この3党が連立交渉に励んでいた最中、興味深い事件が起こった。社民党が唐突に交渉を中断したのだ。なぜ? 実は、この日は朝から州議会が開かれており、AfDがそこで、コロナ禍で実施された各種の感染予防対策についての総括を提議した。というのも、当時のコロナ対策の多くは正式な手続きを通さず、専門家の意見も無視して政府が決めたもので、その必要性や有効性が疑われているばかりか、基本的人権を制限、あるいは侵害するものであったとも言われている。しかも、さまざまな被害が出ているにもかかわらず、未だに正確なデータも公開されず、検証もされていない。 そこで、AfDが徹底検証を提案したのだが、CDUと社民党が大反対。それもそのはず、自分たちの不備、あるいは不正が明白になっては大変なので、彼らにしてみれば、全て曖昧なまま葬ってしまい…。 ところが、BSWはそのAfDの動議に賛成したのである。