部屋に響いた長女の悲鳴──山田ルイ53世、娘に“正体”を明かした一世一代の「ルネッサンス」
“秘密”の賞味期限
話を戻そう。 突如目の前に現れた貴族、もとい、父に、「あぁぁぁーーーーーーーー!?」と長女の悲鳴が響きわたる。 見方を変えれば、今回の告白は壮大なドッキリのネタバラシ。驚き、戸惑う側の精神的負担は想像もつかない。(万が一、トラウマにでもなったら……)と二の足を踏みかけたが、既にシルクハット姿をさらしている。 もう後戻りはできぬと、「今まで『違うよ?』って言ってきたけど……」と腹をくくって、「実はパパ、お笑い芸人の『髭男爵』でしたー!」と一息に吐き出した。 ……までは良かったが、筆者が言い終わるか終わらぬかのうちに、「知ってるー!」とあっけらかんとした声。見れば、カウンターパンチの主が、コチラにほほ笑みかけている。 長女であった。
よくよく考えれば、「あぁぁぁーーーーーーーー!?」の時点でもうおかしかったのだ。 普段、Tシャツ短パンでウロついている父が、突然コスプレ姿で現れれば、「えっ、何? どういうこと?」と困惑するのが相場だろう。ところが長女ときたら、「街で偶然、同郷の幼なじみと再会した」とか、「なくしたスマホが見つかった」ときのようなリアクション。平たく言えば、喜んでいたのである。 今更だが、10年という歳月は、ひとつ屋根の下で暮らす相手に抱く“秘密”の賞味期限としては長過ぎた。
名探偵にパパはタジタジ
絵本の読み聞かせの最中、不覚にもウトウトした父の顔から眼鏡を奪い、「ほらー、めがねとったら“ひげだんしゃく”じゃーん!」と得意げだった幼稚園児の長女。「これあげるー!」と渡された筆者の似顔絵の頭に、(……シルクハット!?)と認めざるを得ない黒い塊が載っていたこともある。 わが子が核心に迫ってくるたび、「違うよ?」「似てる人だよ?」とすっとぼけ、「たしかにちょっとちがうねー!」と娘が引き下がるまで粘っては、(大丈夫! しょせんは子供……)と高をくくっていたのだが、向こうが一枚も二枚も上だったようだ。 現に今も、「そのお洋服だって……」と筆者の出で立ちを指さし、「パパが出掛けるときいっつもママと、『今日、衣装着る? 着ない?』ってコソコソ話してるじゃん!」と夫婦そろって脇が甘いと、追及に余念がない。