女性はなぜ「汚い!」の嫌悪感を男性より抱きやすいのか、進化論的な利点とは
子どもを守る
感染源となり得るものに対して女性が用心深くなることは、「進化論的な観点から見て理にかなっています」とサラビアン氏は言う。「なぜなら、子どもを産んで育てるのは私たち女性だからです」 出産時や育児中の母親は感染症にかかりやすいだけでなく、母親が子どもに病気をうつすおそれもあるため、リスクはさらに高くなる。 一部の研究者は、感染に対して最も弱い時期(例えば、母体が胎児を異物とみなして攻撃しないように免疫系が抑制されている妊娠初期)には、嫌悪感がさらに強くなるという理論を唱えている。 妊娠初期の女性を対象に、嫌悪の感じやすさを調査した研究では、賞味期限切れの牛乳やゴキブリなどに強い嫌悪感を抱く妊婦ほど、血液中に免疫反応の痕跡が少ないことが明らかになっている。この研究は2022年に学術誌「Evolution and Human Behavior」に発表された。 嫌悪を感じる現象を頭で理解しようとしても、嫌悪感から逃れることはできない。実際、糞便や体液などの不快な刺激に10年以上さらされてきたサラビアン氏は、以前にも増してこれらに嫌悪を感じているという。 「自分の身の回りに潜む危険について、以前よりはるかに敏感になりました」と氏は言う。「嫌悪感を消し去るのは簡単ではありません」
文=Elizabeth Anne Brown/訳=三枝小夜子