トランプはなぜこんなに強い?言動は問題だらけ、でも有権者は「違う部分」を見ていた…既に事実上の共和党候補に【混沌の超大国 2024年アメリカ大統領選①】
2021年1月に発足したバイデン政権の下で雇用は堅調で、アメリカ経済は底堅い成長を続けている。だが有権者が持つのは、世界はより危険になり、米国は弱く、貧しくなったという感覚だ。 「不動産王」として名を成し、セールスマンシップに秀でるトランプ氏は、事実にとらわれない宣伝やマーケティングの達人だ。「バイデン氏がアメリカをだめにした」との認識を有権者心理にすり込み続けており、こうした戦略が効いている。 ロシアの横暴な振る舞いやパレスチナ自治区ガザを巡る悲劇、米国との対話を無視する北朝鮮のニュースを耳にし、米国内では景気が好調だとされながらも増え続けるホームレスを目にする国民は以前を懐かしみ、トランプ政権という過去が輝きを増す。 バイデン政権は「米国は前進している」と訴えているが、「米国第一」を掲げるトランプ氏に酔いしれる有権者には響かない。 半世紀以上、アメリカ政治を見つめてきたアイオワ州立大のステフェン・シュミット名誉教授はこう指摘する。「バイデン氏はインフレ対策や雇用創出などの実績をうまく示せておらず、現職の強みを生かせていない」
▽あざ笑うトランプ氏、溜飲下げる支持者 現在、トランプ氏との指名争いに踏みとどまっているのは、ニッキー・ヘイリー元国連大使(52)だけになった。南部サウスカロライナ州でインド移民の子として生まれ、同州初の女性知事を経て、トランプ政権で国連大使を務めた人物だ。 「本選でバイデン氏に勝てるのは私だけ」。トランプ氏の過激な言動を快く思わない共和党穏健派や、インディペンデントと呼ばれる無党派層を引きつけ、じわりと支持を伸ばしてはいるが、トランプ氏に追いつけていない。 ヘイリー氏はニューハンプシャーで敗北した1月23日夜、「戦いの終わりには、ほど遠い」として選挙戦の継続を力強く宣言した。故郷サウスカロライナの予備選がある2月24日まで持ちこたえられるかが目下の焦点だ。 トランプ氏の指名獲得が濃厚になるにつれ、ヘイリー氏が資金集めに苦労し、撤退を余儀なくされるとの観測は根強い。サウスカロライナはトランプ氏支持のキリスト教右派の福音派が多く、ヘイリー氏は地元とはいえ旗色が悪い。自身の知事時代に副知事だったヘンリー・マクマスター現知事がトランプ氏支持を表明したことも逆風になっている。