「XRヘッドセット」を親が子に与える深刻事情 日本とは異なる独自の発展を遂げる「英語圏」
2024年、XRデバイス市場は著しい成長を見せた。今年発売された製品だけでも、ARグラスとXRヘッドセットを合わせて10機種以上が市場に投入され、その多様性は着実に広がっている。 【画像】2024年夏、品薄になったMeta Quest 3SなどのXRヘッドセット ■日本市場で品薄になるという異例の事態 特に注目すべきは、夏に起きたXRヘッドセット市場での予期せぬムーブメントだ。人気動画配信者であるスタンミ氏によるVRChat(VRC)実況動画が若年層の間で爆発的な人気を集め、Meta Quest 3やPICO 4といった主要なXRヘッドセットの在庫が日本市場で品薄になるという異例の事態を引き起こした。
VRChatとは、アバター姿となり仮想空間のなかで会話ができるメタバースサービスだ。以前から一部のVTuberが参加するなど、賑わいを増してきていたものの、2024年夏の事態は"スタンミショック”と呼ばれ、さらに多くの配信者やVTuber、そして彼ら彼女らのファンがVRChatに集うこととなった。 この現象は、かつて「会いに行けるアイドル」として日本のエンターテインメント界に革新をもたらしたAKB48のムーブメントと興味深い共通点を持つ。憧れの存在と実際に交流できる可能性、その期待感が消費行動を促す要因となっているのかもしれない。この「出会いへの期待」という要素は、日本のXRデバイス市場において効果的な訴求ポイントとなる可能性を示唆している。
■英語圏で広がる子どもたちのXR利用 英語圏のXRデバイス市場では、日本とは異なる独自の発展を遂げている。特に注目すべきは若年層ユーザーの急増だ。その代表例として挙げられるのが、VRゲーム「Gorilla Tag」の驚異的な成功である。ファミコンのような、もしくはマインクラフトのような低画質のゴリラキャラとなって、鬼ごっこをするゲームだ。ルールが極めて簡単なことも注目に値する。 「Gorilla Tag」は、XRヘッドセットという専用デバイスを必要とする参入障壁の高さにもかかわらず、日々100万人以上のプレイヤーを集める人気タイトルとなっている。収益は1億ドル(約156億7000万円)を超え、業界に大きな衝撃を与えた。特筆すべきは、この成功がソニーや任天堂といった既存の大手ゲーム企業ではなく、2021年に設立されたベンチャー企業によってもたらされたという点だ。