政策金利は当面据え置きか? 11月FOMC議事録要旨から何が読み解けるか
長期金利が上昇「リスクは二面性を有してきた」
その上で議事要旨を改めて整理すると、まずFRBスタッフが示した景気認識は高成長となった7~9月期から10~12月期にかけて景気は減速するというものでした。またFOMC参加者の認識は、家計部門について(複数の参加者が)低所得世帯が金融引き締めによる与信環境の悪化と食料及び生活必需品の上昇に直面するとしつつも、(別の複数の参加者が)これまでの度重なる消費データの強さは、消費の上振れリスクを示唆しているとの指摘がありました。個人消費の強さがFOMC参加者の想定外であったことがうかがえます。 他方、これまでインフレ退治を完遂するために引き締め寄りに傾けてきたFOMC参加者の総意はここへ来て変化がみられ、参加者全員が「リスクは二面性を有してきた(risks to the achievement of the Committee’s goals had become more two sided.)」と言及したとの記載がありました。その背景に9月FOMCから10月下旬にかけての長期金利上昇があったことは明白であり、この動きに対する見解に多くの紙面が割かれていました。長期金利上昇の背景としては様々な見解が紹介されていましたが、「いずれにせよ長期金利の持続的な変化が金融政策のパスに影響を与え得る」という結論めいた記載がありました。
12月FOMCに向けFRBの情報戦略はややタカ派に?
このようにFRBが(市場参加者の見通しが反映される)長期金利を重視する姿勢を見せたことに鑑みると、今後市場参加者が先鋭的にFedの利下げを織り込んで長期金利が低下していくのであれば、12月FOMCに向けてFRBの情報戦略はややタカ派に傾斜していく可能性があると思われます。もちろん、学生ローンの返済再開などによって経済指標が市場参加者の想定以上に悪化するのであれば話は別ですが、現在と大きな変化がない限りにおいてFRBは一段の金利低下に対して不快感を示すのではないでしょうか。
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