パウエル議長はジャクソンホール講演で「出口」ほのめかすか?
●デルタ株の感染拡大
もう一つは、変異株の感染拡大です。米国の死者数、感染者数は依然ピーク時を下回るものの、直近では急激な増加基調にあり、今後、冬の訪れを見据えれば、経済活動が再び制限される可能性も否定できなくなってきました。米国のコロナ感染者数の約3割を占めるフロリダ州とテキサス州を中心に感染が爆発し、フロリダ州の死亡者数は1月のピーク時を大幅に超えています。 この2つの州はワクチン接種率こそ全米平均並みですが、マスク着用などコロナ感染対策に消極的とされており、行動変容が起きにくいとの指摘が多くあります。現在のところ経済活動に目立った影響は確認されていませんが、このまま感染拡大が止まらなければ、経済活動に何らかの制限が加わる恐れがあります。 変異株の感染拡大についてはタカ派寄り(金融緩和の長期化に否定的)な見解を示しているカプラン・ダラス連銀総裁も警戒姿勢を示しました。同総裁は9月FOMCにおけるテーパリング開始決定を支持するなど最もタカ派寄りに分類される存在ですが、20日の講演では「デルタ変異株の感染拡大が長引く、ないし状況が英国やインドで見られたものと異なった形で展開し、需要への影響開始といった点でより厳しい状況になるようであれば、私はこれまでの見解に固執することなく柔軟な姿勢で機動的に対応したい」としてタカ派的見解を修正する用意があることを示しました。 こうした状況下、ハト派寄りの見解を有するパウエル議長がジャクソンホール講演で9月のテーパリング開始決定を示唆する可能性は低いのではないでしょうか。
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