「バレンシアガ」超高層シルエットで上海のビル群を描く アジア初のショーは大雨と熱狂と「アンダーアーマー」と
巨大靴をはじめ、コミカルでフックの効いたアクセサリーは充実。シューズボックス風のレザークラッチバッグ、トレンチコートやシャツなど普遍的なアイテムから作ったワンショルダーバッグ、汚れ加工を施したハイヒールソックス、「ジェイコブ(JACOB & CO.)」とのジュエリーなどを披露した。アイコンバッグ“アワーグラス”は“ロデオ”で用いているやわらかいレザーにアップデートしている。
超絶技巧でたたみかける終盤
終盤のクチュールパートでは、デムナ節がいっそう強まった。“クチュール界の建築家”と呼ばれた創業者クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)のアイデアを現代風に解釈し、1957年に発表した円筒形シルエットの“サックドレス”を旅行かばん=サックを使って再現。アーカイブのピンクフェザーのドレスは、10年以上前のビニール袋を手で裂いてフェザー風仕立てにし、現代に蘇らせた。防護服などに使うプロテクティブな素材タイベックで純白のドレスを作り、ゴールドにコーティングした包装紙のようなドレスで体をラッピングした。ブラックベルベットのドレスには「バレンシアガ」の歴代ジュエリーを全面に縫い付け、時代を超越した輝きが、大雨に耐えるゲストたちを照らした。
メゾンが継承し続ける夢のような技術と、デムナの日常生活に軸を置いたアイデアを融合させ、幅広い層がピュアな驚きを感じられるピースが続いた。フィナーレでは、ランウエイから離れた位置に設けた大きなスクリーンの前をモデルが歩き、どこか奇妙で美しい、構築的シルエットが浮き上がった。中には傘をさすのを諦めて、その光景を目に焼き付けるゲストもいた。
地域との関係性を深める取り組み
ショー後のアフターパーティーには、「バレンシアガ」を身に着けた巨大な肩の若者が地元の大箱クラブに集い、熱気に包まれていた。また今回のショーに合わせて地元レストラン「NU XIANG MU DOU」とコラボレーションし、黒トリュフを使った小籠包と、近隣地域の名物菓子“ウィンウィンケーキ”をショー後に一般販売した。「アリペイ」との協業も含め、ローカルとのつながりを強く意識した施策を同時多発的に行い、ショー翌日の顧客向けの受注会はごった返していた。「バレンシアガ」は中国本土の24都市に出店しており、中国市場が重要であることを証明する一大プロモーションだった。