2024年のスマホを総括 生成AIの浸透/カメラは完成形の域に/メーカーの勢力図に変化も
「Galaxy AI」「Apple Intelligence」「Gemini」……2024年は、スマホが生成AIを取り込み、その基本性能を大きく伸ばした1年だったと総括できる。一方で、スマホに搭載される機能の中で最も重要視されているカメラも、本家といえるデジタルカメラに迫る性能を持った端末が多数投入された。カメラの処理にもAIがフル活用されてきたが、その集大成的な1台が目を引いた1年だった。 【画像】2024年に大きくシェアを伸ばしたメーカー メーカー別という切り口で見ると、“新顔”が大きく伸びた傾向も見て取れる。Xiaomiとモトローラは、その代表格といえる。規模感ではこれら2メーカーには及ばないものの、新規参入のメーカーとしてNothing Phoneのミッドレンジモデルである「Nothing Phone(2a)」も大きな話題を集めた。スマホ市場に再参入したZTEも、格安のフォルダブルスマホで注目された。1年を振り返る連載の後編ではそんな各社のスマホに焦点を当て、進化の方向性をまとめていく。
オンデバイス+クラウドで動作する生成AIがスマホの標準機能に、残る日本語対応の課題
この1年のスマホは、まさに“AI一色”だったといっても過言ではない。スマホにAIを搭載するトレンドは2024年に突如始まったものではないものの、この1年は特にその動きが目立った。2023年までのトレンドと区別するなら、機能の1つとしてAIを使うのではなく、あたかもOSかのようにベースとしてのAIが浸透した1年だったといえる。1月に発表されたGalaxy S24シリーズで対応が始まったGalaxy AIは、その先駆けともいえるサービスだった。 Galaxy AIは、CMなどでもフィーチャーされた電話の同時通訳に加え、ボイスレコーダーの文字起こしやブラウザの要約、PDFの翻訳など、適用される機能が多岐にわたる。いずれもスマホの基本と呼べるアプリや機能だが、AIによってそれが大きく底上げされた格好だ。オンデバイスAIとクラウドAIを組み合わせているため、文字起こしや電話の通訳のような機能は、データ通信をオフにしているときでも利用できる。 先行してGalaxy S24シリーズに搭載されたGalaxy AIだが、その後、サムスン電子は過去のモデルにもアップデートでこれを適用。7月に登場したフォルダブルスマホの「Galaxy Z Flip6」「Galaxy Z Fold6」も、Galaxy AI対応の「折りたたみAIスマホ」として発売された。Galaxy S24シリーズは発売当初から日本語が利用でき、定期的にその精度を上げているのも特徴といえる。 Appleもここに対抗し、6月に開催されたWWDCで生成AIを全面的に取り入れた「Apple Intelligence」を発表。9月に発売された「iPhone 16」シリーズを、Apple Intelligenceのために設計された初のiPhoneとして売り出した。入力した文章のトーンを変更したり、イラストを書き起こせたりと、さまざまな機能をiPhoneに追加した格好だ。Apple Intelligenceは、10月に配信が始まった「iOS 18.1」でサービスを開始。12月に登場した「iOS 18.2」では、イラスト生成の「Image Playground」が加わった。 Googleは、「Pixel 8 Pro」が搭載したGemini Nanoを、6月に「Pixel 8」や「Pixel 8a」に拡大。8月、9月に発売した「Pixel 9」シリーズは、全機種がGemini Nanoを内蔵していた。これによって、キーワードから画像を生成する「Pixel Studio」や、取得していたスクリーンショットを分析し、その内容を表示する「Pixel Screenshot」などが利用できるようになった。通話の内容を自動的に要約してくれる「Call Notes」も、オンデバイスAIのGemini Nanoで実現した機能だ。 一方で、いずれの機能も現状では日本語に非対応。Pixel 9シリーズを紹介するGoogleのサイトやCMでも、これらには一切言及されていない。Apple Intelligenceも当初は英語のみの対応で、設定を英語に切り替えるなどしないと、日本で利用することはできない。Appleは、2025年4月のアップデートでApple Intelligenceを多言語化することを表明しており、おそらくこのタイミングで日本語への対応も実現するはずだが、半年以上のタイムラグがあるのは少々残念だ。 英語での開発が先行しているAIを売りにしながら、端末をグローバル展開することの難しさが浮き彫りになった。先に挙げたGalaxy AIや、Xiaomiが「Xiaomi 14T/14T Pro」で搭載したAIは当初から日本語が利用できたものの、現状では日本語の文字起こしなどの精度は英語のそれに及んでいない。こうした各社のAIを見ると、ローカライズの難度が一段と上がっていることがうかがえる。 おサイフケータイ対応や防水・防塵(じん)仕様など、ハードウェアにまつわる日本市場対応をすればよかった時代に比べ、よりソフトウェアのローカライズが求められるようになってきたというわけだ。英語以外でいかにAIを実装していくかは、2025年に持ち越された各メーカーの課題といえる。