なぜ中継カメラマンによる渋野日向子への”お菓子手渡し事件”が起きたのか?
11月の「伊藤園レディス」を取材した新聞やネット媒体の複数のカメラマンは、テレビ中継を担当したテレビ朝日のスタッフが同様の行為を行っていたとも証言している。 なぜこのような規則違反が生まれるのか。トーナメントを中継するテレビ局や主催者のモラルの低さは以前から指摘されていた。渋野は、一躍、スポットライトを浴びた昨夏の全英オープン優勝の際にも、ラウンド途中にお菓子を食べてエネルギー補給&リラックスタイムとしていることが話題となり、そのお菓子がブレイクして、品切れになるほどになった。 もちろん、渋野が試合前に準備しているものだが、中継局側からすれば、その絵が撮りたいがゆえに、ゴルフという厳格なルールに守られてきた歴史と精神を甘く見ていたものと考えられる。現場を取材している側から見るとトーナメントを中継するテレビ局がゴルフという競技をバラエティー番組と同程度にしか扱っていないようにも思える。 黄金世代やプラチナ世代と呼ばれる若手の多い女子ゴルフでは、特にその傾向が強く、スポーツ報道の枠を超えた選手との距離の近さは目に余るものがあった。たとえば、ラウンド中の選手に声を掛けて、カメラに向かっての笑顔や手を振ることを求める。注目選手には、ホテルからコースへの移動に同行したり、プライベートゾーンにも、踏み込みドキュメント風に仕立てる。まるで友達感覚で接近してお菓子の差し入れなどは日常茶飯事。 今回の問題も“撮れ高”に躍起になったカメラマンのモラルや意識の低さが引き起こした問題である。 また開幕が遅れた今季は全試合が無観客で行われるなど、新型コロナの感染予防に細心の注意を払わねばならない特別なシーズンだった。多くのツアーでメディアなど大会関係者はPCR検査を義務づけられているが、このモラル、意識の低さが、もし新型コロナの感染を生み出していれば大問題である。
さらに中継局のスタッフのそういう違反行為を助長させてきた現場の空気感にも問題はある。VIPクラスの大会関係者の行動だ。新型コロナの感染予防のため、メディアを含め大会関係者は、すべてPCR検査を受けるなど、徹底した対策が取られている一方で、マスクもせずに選手に話しかけたり、平気で握手を求める“お偉い方々の行動”が複数のトーナメントで何度か目撃されている。 今季の国内ツアーは終わったが、JLPGAは中継局のテレビの問題に関して「ここまでモラルが低下していることは看過できない」とし、来年のシーズン再開までには各テレビ局に「選手との距離感。モラルの徹底」を求める説明会などを開催する方向で動き始めた。 そしてもうひとつ気になるのが“被害者”渋野のメンタルだ。「渋野がホールアウト後に泣いていた」との一部報道もあった。絵づくりに利用された側の渋野を“同罪”として批判する声もある。その軽率な行動を指摘する声である。 甘んじて受け止めなければならない意見ではあるが、身勝手なテレビ局の暴走に巻き込まれた側の渋野のメンタルが心配されている。渋野は10日から全米女子オープン(テキサス州・チャンピオンズゴルフクラブ )という今季最後の大舞台を控えている。