非エリート街道から世界トップ100へ。18年のプロテニス選手生活に終止符、伊藤竜馬が刻んだ開拓者魂
26年間を輝かせた「出会い」と「自己投資」
テニスに出会った日から26年後の、引退の日――。“純国産”と呼ばれたその足跡の中で、彼を特別たらしめたものは何かとの問いに、伊藤は「出会い」だと即答した。 「やっぱり、人との出会い……コーチやスタッフとの出会いというのは、選手にはすごく大事だと思う。その上で、自分に投資すること。その大切さを理解した上で、自分でしっかり決断する能力。あとは“テニスをやり続けられる能力”というのは、非常に高かったのかなというのはあります。やっぱりテニスって、つらいことを毎回やる訳じゃないですか。それをずっとやり続けながら、高く目標設定をしていました」 紆余曲折や試行錯誤もあったキャリアの中で、学んだそれらの財産を、伊藤はこの先、「若い選手たちに伝えたい」と言った。豪快に見えながらも、その実、繊細で篤実な人柄で後輩選手たちからも慕われており、早くも「コーチとして見てほしい」と声も掛かっている。 9歳でテニスに出会って以来、伊藤竜馬はラケットを携えて、まずは地元の北勢町からスクールのある隣町へ、やがて県に、全国に、そして世界へと活躍の舞台を広げていった。その開拓者魂でこれからは、後進たちを新たな領域へと導いていくに違いない。 <了>
文=内田暁