マガジンハウスの広告増と新たな挑戦
「届ける力を強くする」が今期の目標
「10月からの第71期で何に注目しているかというと、編集側の動きとして、コロナ禍で実行し始めた『数字の確認』『横串での共有』を進めることによる、当事者意識とスピードの強化ですね。各誌デジタルチームに成長すべき採算部門としての自覚が根付いてきたので、ウェブ運用だけではなく、SNSについてもより戦略的にリーチを拡大するために個別の会議を設け、意識を共有しています。 デジタルコンテンツの幅の拡大、具体的には動画に力を入れ始めたことがこの成長を後押ししています。そのためにブランドビジネス局に映像チームを作りました。『ブルータス』が5月1日発売号から、1号ごとにオリジナルの動画を作って配信しています。この12月15日には16本目の動画が公開されました。 恐らく、先行デジタルメディアは、PVを稼ぐことで広告在庫を増やすというアドネットワーク(ADNW)広告を主な収益源としていると思いますが、それが今、単価の減少により大きな影響を受けています。マガジンハウスの場合はデジタルにおいてもタイアップ広告が中心になっているため、比較的ダメージを小さく抑えられています」(同) 今後、新たに取り組む施策、重点的に手を付ける動きは何なのか。 「Contents is King, Distribution is Queenと言われますが、コンテンツの強化だけでなく、それをどう届けるか。『届ける力を強くする』ことを今期の目標としています。いいものを作るだけでは不十分で、届けることまでを編集領域として考えていかなければいけないと思っています。 具体的には『動画』『SNS』『D2C』の3つを重点的に強化します。 動画は、デジタル上で現在最も届くフォーマットです。『ブルータス』については先ほど話しましたが、『&プレミアム』の10周年ムービーや『カーサ ブルータス』の特集連動動画など、プロジェクトが次々と生まれています。 SNSについては、ユーザーとの最大かつ最初のタッチポイントであり、重要度は増す一方であると感じており、日々いろいろな施策を行っています。 D2Cはいわば直販ですね。『ポパイオンラインストア』では、期待の声が大きかった海外発送をスタートさせました。『ターザン』が運営している『チームターザン』も2週間に1度の有料オンラインイベントを行っていますが、多い時は200~300人のユーザーが参加します。実施後のアンケートも編集部のデジタルチームが行っていますが、ユーザーの生の声を拾ってそれをプロダクトに活かしていくサイクルが回っています。 この数年の実感から、オンラインでもオフラインでもマガジンハウスらしさを大切にすることで良い循環を作っていけると確信しており、改めて社是『読者を大切に/人間を大切に/創造を大切に』に原点回帰すべきだと感じています。デジタル時代に必要な『届ける力』をアップデートしていくことで、独自の未来を切り拓いていきたいと考えています」(同)