マガジンハウスの広告増と新たな挑戦
紙の雑誌もデジタルも広告好調の要因は…
好調だという広告部門を統括している西田善太取締役に話を聞いた。西田取締役は2022年まで14年間『ブルータス』の編集長を務めた後、現在は、広告局と統合したブランドビジネス局と、クロスメディア事業局を統括している。 「9月末までの第70期の決算で言うと、 広告全体の売り上げは前期比で約107%。コロナ前の66期(19年9月末決算)と同水準にまで回復しました。デジタル広告が順調に伸びていますが、特筆すべきは紙の雑誌広告が前期比110%を達成したことです。定期刊10誌のうち7誌が前期を超えました。 大きく売り上げを伸ばしたのは『ブルータス』と『GINZA』です。『ブルータス』はラグジュアリーブランドの伸びや、特集と連動させた大型タイアップ、デジタル広告、その他のクリエイティブブティック的な案件など全方位で順調に推移し、前期比約150%弱を記録しました。 『GINZA』はファッションが中心ですが、ラグジュアリーブランドだけではなく、ドメスティックブランドやカジュアルファッション、スポーツブランドや流通系も含めて幅広い分野の広告が伸びました。デジタル広告に関しても定期刊10ブランドの中でトップの売り上げとなっています。 今まで積み重ねてきた企画力やコンテンツのクオリティを掛け合わせることで、強力な広告商品となったし、“横串企画”と呼んでいる複数誌の連合企画を行ったことで、いくつかの成功事例が生まれたのだと思います」 いわゆる“横串企画”としては、SNSのPinterestとのタイアップ企画で、6雑誌ブランドが連動してコンテンツを制作。本誌、ウェブサイト、動画制作、OOHなど立体的に展開し大規模な企画となった。またNTTグループ内でVRやARなどの事業を展開するNTTコノキューとのコラボで、先方の「360Media(スリーシックスティメディア)」というVRサイト内に「マガジンハウス大学」という仮想の大学を作り、そこに4ブランドが動画コンテンツを提供、「マガジンハウスが大学を作った」として話題となった。 「そういうブランドを横断した大型企画を成立させるためには、各雑誌ブランド群のコンテンツ力とともに、それらを束ねスムーズに推進させる効率的な連動も必要です。各編集部の意識の変化に加え、スピーディかつオープンなコミュニケーションができるようになったことが大きいですね。ブランドビジネス局が進めてきた社内DXが実を結んだ形になっています。 営業チームに関してもさまざまな業界から積極的に採用を進めています。新鮮な知見を集め、新たな広告商品の開発や営業強化をしていきたいと思っています」(西田取締役) 全社でデジタル広告売り上げは伸長しており、特に『GINZA』や『ブルータス』『ポパイ』などのブランドは大きく数字を伸ばし、過去最高の売り上げを更新し続けているという。