麻痺した足が動き出す ── 足こぎ車いすCOGYが放つ“夢見る力”
私も、COGYを試乗した。小さいときに乗った三輪車を、思い出した。体いっぱいで風を感じ、そのまま加速したら空も飛べそうで、ワクワクの連続だった。 冒頭で触れた、私がかつて作った写真集のタイトルは『ロマンティック・リハビリテーション』だ。「ロマンティック」という言葉は、不可思議な人間存在に対する尽きない好奇心に導かれ、目に見えないものを知ろうとする姿勢、という意味を込めたものだった。脊髄の原始的歩行中枢を刺激することで、麻痺した運動機能が呼び覚まされる。人の未知なる本能のメカニズムから生まれた足こぎ車いす、まさにこれぞ「ロマンティックCOGY」と呼びたい。 写真と文=大西成明
【Profile】
大西 成明 写真家。1952年奈良県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。「生命」や「身体」をテーマにした写真を撮り続けている。写真集『象の耳』で日本写真協会新人賞(1992年)、『地球生物会議』ポスターでニューヨークADC賞ゴールドメダル(1997年)、雑誌連載『病院の時代:バラッド・オブ・ホスピタル』で講談社出版文化賞(2000年)、写真集『ロマンティック・リハビリテーション』で林忠彦賞、早稲田ジャーナリズム大賞(2008年)を受賞。元東京造形大学デザイン学科教授。