【NBA】アンソニー・エドワーズを軸に躍進を遂げたティンバーウルブズ、『リスク上等』で優勝を狙うチーム編成を進める
カール・アンソニー・タウンズは放出せず『継続路線』
ティンバーウルブズが最後にラグジュアリータックスを支払ったのは2019-20シーズンだった。ディアンジェロ・ラッセルを獲得できるチャンスがトレードデッドラインに突然やって来て、オーナーのグレン・テイラーはラグジュアリータックスのラインをわずかに超えることを許可した。地元ファンから『ケチ』と嫌味を言われるオーナーとしては驚くべき判断だった。若きエースのアンソニー・エドワーズを擁して優勝争いのできるチームとなった今、ウルブズは4年前とは桁違いの贅沢税の支払いを受け入れるようだ。 ティム・コネリーGMは昨シーズンが終了した時点で「基本的には同じメンバーでチームを編成したい。そこに多少の変化はあるにせよ、今のチーム作りをとても気に入っている。良いものはできる限り変えたくはい」と語ったが、それは矛盾している。大幅なサラリー削減、つまりは噂となっていたカール・アンソニー・タウンズをトレードで放出しない限りは、フリーエージェントとなるカイル・アンダーソンやモンテ・モリスを再契約で引き留めることはできなかった。 ウルブズの選択はタウンズの残留だった。NBAドラフトではスパーズから1巡目8位指名権を得て、いずれマイク・コンリーの後継者となるロブ・ディリングハムを獲得。フリーエージェント市場ではベテラン最低保証額の契約しか結べない状況でジョー・イングルスとPJ・ドジアーを獲得している。 アンダーソンとモリスを手放し、コンリーには年俸ダウンを受け入れてもらうなど減額に努めたが、アンソニー・エドワーズとジェイデン・マクダニエルズの新契約が重く圧し掛かってサラリー総額は跳ね上がり、これまで収めてきたタックスラインを軽々と超えてセカンドエプロンも上回った。 現オーナーのテイラーから新たなオーナーグループへの球団譲渡が上手くいっていない中で高額のラグジュアリータックスを支払う判断は、問題をより悪化させる可能性がある。それでもウルブズは勝負に出た。エドワーズがエースであっても『チームの顔』はタウンズであり、彼を放出してしまえばウルブズは別のチームになってしまう可能性がある。 西カンファレンスはレベルの高い争いが続いているが、新しいサラリーキャップのルールが始まったばかりの今は、思い切った手を打てないチームが大半で、トップチームに『地盤沈下』が起きている。ウォリアーズの『王朝』はいよいよ傾き、レイカーズはレブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスを擁しながらも若手育成へと舵を切る。クリッパーズはポール・ジョージに見限られ、ナゲッツはウルブズと同じような立場にあるが選手層が薄くなる流れを傍観せざるを得ない。まだオフは長いとはいえ、この調子であればマーベリックスとサンダー、そしてウルブズが西カンファレンスの本命となる。 ウルブズが今後長くチームの健全な運営を続けるにはタウンズ放出は不可避だが、それを理解した上で賭けに出た。セカンドエプロン超過を何年も続けることは考えられず、この体制で勝負できるのは1回きりだろう。 ウルブズ入りが決まったイングルスは、『ESPN』にこう抱負を語っている。「実は昨年も熱心なオファーをもらって、マジックを選んだけどウルブズには注目していた。良いチームなのは間違いない。僕はまだトップレベルで挑戦したい。これは手放すにはもったいなさすぎるチャンスだ。チームメート全員の成長とチームのさらなる飛躍に貢献するつもりだ」 主力は全員が残った。カイル・アンダーソンの穴は大ベテランのイングルスが埋める。ウルブズのカンファレンスファイナル進出は20年ぶり2回目で、これがクラブ史上最高の成績。リスクが大きいのは承知の上で、新シーズンはNBAファイナル進出、そして悲願の初優勝とクラブの歴史を書き換えるつもりだ。