徳島、福岡が決めたJ1昇格争いにあった壮絶ドラマ…長崎に突きつけられた残酷な結末
「カッコいい言い方をすれば、十字架を背負ってきた感覚が自分のなかにあった。僕の性格上、それを捨て切れないし、捨てちゃいけないと思ってきたので。僕なりに長いストーリーがこの場所にはあり、思い返せばいいことばかりじゃないので、それらがフラッシュバックするかのような涙でした」 スペイン出身のリカルド・ロドリゲス監督が就任して4年目。ボールを保持し続けるスタイルのもとで4バックと3バックを、前線からアグレッシブにボールを奪い返す時間帯と自陣にリトリートするそれとを使い分ける戦い方がさらに浸透した今シーズン。浦和レッズの新監督就任が有力視されている46歳の指揮官は「勝利に、昇格にふさわしい活躍を演じてくれた」と選手たちをねぎらった。 もっとも、試合終了直後のフラッシュインタビューでは、ロドリゲス監督のスペイン語を訳していた小幡直嗣通訳が感極まって数秒間も無言に。徳島に関わるすべての人々が心を震わせた夜だった。 敵地で対峙した愛媛FCをMF山岸祐也、FW遠野大弥のゴールで前半のうちに突き放し、今シーズンで19度目の零封勝ちを収めた福岡は、ベンチに入れなかった選手も含めてベンチ前に集結。用意されたモニター越しに、長崎とヴァンフォーレ甲府の一戦の行方を見守っていた。 1-1のまま引き分けに終わればJ1昇格が決まり、猛攻を仕掛けている長崎が後半アディショナルタイムに勝ち越しゴールを奪えば、残り1枠をめぐる勝負は最終節へともつれ込む。果たして、モニターをチェックし始めた直後に、5年ぶりの昇格を告げる光景を画面越しに確認できた。 狂喜乱舞する選手やスタッフを、今シーズンから指揮を執る長谷部茂利監督はやや遠い位置から見つめていた。指揮官自身は照れくさそうに否定したものの、目にはうっすらと涙がにじんでいた。 「みんなの行動を見ていて微笑ましかったし、心のなかでは(引き分けてくれと)祈る気持ちでいっぱいでした。非常にいい試合内容でしたし、チーム全員でつかんだ昇格だと思っています」